チョマサ

ティファニーで朝食をのチョマサのネタバレレビュー・内容・結末

ティファニーで朝食を(1961年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

有名だけど、どんな映画なのかを知らないことがある。
見たことがなくても筋を知っていることは多いのだけど、この映画はそういやどんな話か全然知らない。オードリーヘップバーンの演じるキセルを持った黒いドレス姿のキャラクターのビジュアルしか知らなかった。
あとは変な日本人が出てることは知っていた。外国映画の変な日本人特集でユニオシがテレビに取り上げられていたのを見たくらいだった。

見てみると、面白いロマコメ映画だった。ポールと同じアパートに住んでいる変な女ホリー・ゴライトリーの生活を追うコメディから始まる。それから売れない小説家ポール・バージャックのヒモ生活を少し挟み、最終的にホリーとポールが結ばれるラブストーリーで終わる。ムーンリバーが感動的に盛り上げるラストはかなりよかった。
いま見ると刺激は足りないのだけど、それでもホリーのキャラクターは面白いし、ギャグがよく入るコメディから始まったのに全然タッチの違うラストになるのもかなり面白かった。

ホリーが変なのも複雑な人生や兄のフレッドとの関係からそうなったことも分かるし、名前を付けていないホリーの飼い猫となぞらせている。
カポーティの原作とは物語が異なるらしい。この映画のとおりの物語だったら、カポーティの印象が変わっていた。カポーティっていったらフィリップシーモアホフマンのあの作家の印象しかなかった。冷血っていうなんか怖そうな本を書いた作家の印象だったけど、実際こういうロマンスも書く作家なのかな。

マリリン・モンローをモデルに書いたり製作時にジョディ・フォスターがいたら彼女が理想だったとか、カポーティのイメージがなんとも不思議だった。
最初はジョンフランケンハイマーが監督だったってパンフの解説に載ってたけど、それも不思議だった。
ブレイクエドワーズってピンクパンサーシリーズを撮った監督ってくらいしか知らなく、この映画以外の監督作はまだ観てないな。

追記20160612
村上春樹氏訳の原作本を読んでみた。村上春樹氏がこの小説を書いた当時のカポーティについて、映画と原作についての意見、カポーティについての評を書いていて、これが相当おもしろかった。
原作とこの映画は全然異なる。物語の時系列から語りかたも違うが、それは小説という媒体のせいもあるとは思う。しかし登場人物が映画とは違っている。ホリーは原作だといろいろな色が入った髪で、性格もいろいろな面をのぞかせる、万華鏡のような女である。語り手である主人公も映画のほうがまだ世間なれしている感がある。原作は彼の主観が加味されるのもあるけど、情けない男になっている。
しかもふたりはくっつかないことが冒頭から明らかにされている。過去を振り返る形なのもあって、昔に失われたものを懐かしむような話になっている。
この本にはタイトル作のほかに『花盛りの家』『ダイアモンドのギター』『クリスマスの思い出』という2~30Pほどの短編が収録されていて、これらの作品も失われたものを懐かしむ話になっている。『クリスマスの思い出』の締めくくりと、今までの時間が唐突に過ぎ去っていく感じがあって、悲しみがあるけどすごくいい。
チョマサ

チョマサ