Melko

マーキュリー・ライジングのMelkoのレビュー・感想・評価

マーキュリー・ライジング(1998年製作の映画)
3.5
うーん……元祖(?)情けない肉弾戦ガンマンブルースウィリスの中では…私史上最も地味な作品だったなー。

随分昔に見たことあるけど、ストーリーはほぼ覚えておらず。アマプラで見放題!とのことで再見。

自閉症の少年がたまたま国家機密の暗号を解いてしまったが為に、口封じで両親を殺され、自身も命を狙われる。
たまたまそれを助けたブルース演じる元囮捜査官アート。2人の命がけの逃避行…!

情けない顔の独り身中年オヤジなのに、事件の薫りをいち早く嗅ぎ分ける能力に長けたFBI所属の主人公(銃の腕は不明、肉弾戦も軽やかさはなく泥試合)と、意思の疎通が全くできない自閉症の少年がバディとのことで、なかなか設定は面白く、しかも解かれた暗号を開発・管理しているのがFBIの親組織で、逃避行も八方塞がり、否が応にも緊迫する展開だが、なんとも話のテンポが悪く、ダラけて見える。
主人公が抱えるトラウマ、少年の個性、強敵から逃げるための機転の利かせ方、敵がズバリ悪とは言い切れない点、告発にデジタルが使えない点、等
良い要素がいっぱいありながら、そのどれもが見せ方が薄く中途半端。ゴリゴリのアクションか、社会派サスペンスか、そのどちらにもなれなかったと見え、消化不良。

何か一個に振り切らなかったところが「あえて」の大衆娯楽なのか。

自分の目の前で少年が死に、毎夜の夢に出るほどそのトラウマを抱える主人公の苦しみも中途半端。
とはいえ、他人の子どもに「父性」あるいは「友情」「人としての義理」を感じて文字通り命がけで動くブルース親父は非常に魅力的。暑苦しくなく、淡々と行動しながらも悲哀を見せる姿は、さすが。
「子どもと共演することで好感度上げようとしてる」なんてレビューもあったけど、別にそれでも良いと思う。たとえそうだとしても、見てる間はそれを感じさせないぐらいの説得力があった。「所詮他人の子どもだろ?」と言う上司に、「それがお前の子どもだったらどうする?」とドライに言い返せる男はカッコいいです。
あれは、芯から良きパパでないとできない演技です。
子どもの目線に立つのが上手い人なんだなと思った。

あとは、「国の為に働く何万の人民」か「自力では生きていけない少年の命」か
そんなの愚問だグーパンだ。どちらも助けるのがブルース親父だ。

自閉症の少年役の子役が凄い。
両親の血がそのままの家に帰宅して、自分のルーティンをこなす姿が切ない。
そして、ベタだけどグッとくるラスト。
友情には言葉なんて要らないね。
子どもに語りかけるには、子どもの目線に立つこと。
Melko

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