Melko

アトランティスのこころのMelkoのレビュー・感想・評価

アトランティスのこころ(2001年製作の映画)
3.5
「テッド、パパは酔っ払いには奢らなかったって。どういう意味?」
「分別ある良い人だったってことだ。それに面倒も起こさなかった。わかるか?」

うーん。
役者の演技は凄かったのだけど、物語自体につかみどころがなかった。

極悪顔してるアンソニー・ホプキンス演じるテッド。ものすごい影と憂いをたたえながら、ボーッとどこか遠くを眺めているなと思ったらポツリぽつりと意味深な言葉を呟く。とある少年のメンターとなっていく。
そんな見た目も言動も行動も怪しすぎる謎おじさんと交流する少年ボビー。このボビーを演じたのがアントン・イェルチン。夭逝したことが本当に悔やまれる、大人顔負けなかなかの演技。ボビーは幼い頃に父親を失くし、以降は母親と一人暮らし。後述するけどこの母親がまぁまぁなレベルのどうしようもない大人。誕生日にもらえたのは無料の図書カード。そんな母親を純粋に気遣い聞き分けのいい子供を演じつつも、子供らしく「やっぱり諦められない!自転車が欲しい!」と息巻いたり、初恋に心躍らせたり、父親の姿を重ねて慕ったであろうテッドとの別れで涙する姿など、喜怒哀楽をイキイキ演じていたのが印象的。歳を重ねおじさんになって、味と深みの増した演技も見てみたかった。

そして!この物語の必要悪かもしれないボビーの母親。米ソ冷戦時代、子持ちの未亡人なんて、相当気合いを入れないと周囲から心ない言葉をかけられることもあったのかもしれないし、舐められたら終わりなこともあったかもしれない。……いや、それにしたって!いくらなんでも自分に金をかけすぎだろ!自慢のドレスに「高そうだね」ってボビーが声かけた時の嫌そうな顔よ…あれが母親の顔かね?夫が賭けで儲けた金だって、きっと…
それよりなにより、しつこいぐらい毎回父親のこと蔑んだりするのがまずありえないし(しかもボビーは一人息子)、思い込みが激しくプライドも承認欲求も高い、自分のためにはお金をかけるけどボビーが頼み込んだって絶対に彼にお金をかけようとしない、絵に描いたような毒親。なんなん?
そんな母親の身勝手な行動がボビーとテッドの行末を決定的にする終盤。泣き顔ひとつで許されるとでも?あんなに慕ってたテッドとの仲があんなことになって、私なら一旦とんでもなくグレてしまいそう。ないわ〜
常に自分のことしか考えてなくて、頭が割とお花畑気味なのもなぁ。

また、ラストの結び方は幻想的で良かったのだけど、ボビーとテッドの関係性、ボビー/キャロル/サリーの仲良し3人組のエピソード、ボビー自身の成長など、エピソードを盛り込みすぎてどれも薄ーくなってしまってるのが気になった。
1時間40分の尺はテンポが良くて良かったのだけども。
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