bluetokyo

男はつらいよ 私の寅さんのbluetokyoのレビュー・感想・評価

男はつらいよ 私の寅さん(1973年製作の映画)
3.5
岸恵子さんがゲストヒロインだったんだな。観客は、男はつらいよシリーズでは、一番多いらしい。話が面白いとか、そういうわけではなく、岸恵子さんの出演が大きいのだろう。フランスに移住してしまったので、珍しかったのだ。とすると、脚本は当て書きなのかな。

ストーリーはシンプルである。
おいちゃんとおばちゃん、さくらと博、満男と揃って九州旅行をする。たまたま、寅さんが帰って来るので、留守番。
旅行が終わって帰ってきた。
そのあと、ひょんなことから、女流画家、柳りつ子と知り合う。
柳りつ子役の岸恵子さんは、このとき、41歳。役の年齢も実年齢に近いと思う。
ちなみに、寅さんは、42歳。とすると、同級生の柳文彦も42歳ということになる。りつ子は文彦の妹なので、41歳近いのだろう。けっこう、歳(オールドミスと文彦は言っていた)なのだ。

寅さんは、りつ子に惚れてしまうのだが、りつ子は、絵の方を愛しているので、と断った。
寅さんは、また、旅に出るのだった。

いったい、なぜ、寅さんは、りつ子さんに惚れてしまうのだろう。甲斐性なしが自分と似ているからだろうか。頼りになる自分でいたいからだろうか。両方なんだろうなあ。

寅さんと、かつての同級生、柳文彦は、柳家の実家に遊びに行く。そこには、妹のりつ子が画を描きながら生活している。林家というのは、もともと林医院という病院だったが、ヴァイオリンとか弾いているうちに潰れてしまった。文彦は、たまに、資金援助しているらしい。

制作中の絵を誤って汚されてしまったとき、りつ子は、えらい勢いで激怒するわけだが、甲斐性なしであれば、わかるような気がする。

怒りの矛先を向けられた寅さん、引き下がるが、そのあと、ずっと、不機嫌を引きずっている。同じように甲斐性なしであれば、これもわかるなあ。

そのあと、手のひらを返したみたいに、りつ子さんは、とらやに、へこへこと謝りに来る。同様に、寅さんも、手のひらを返したように、上機嫌に迎え入れる。画家が客商売かどうか、というのはあるが、客商売であれば、これもわかる。
不機嫌な顔をしていたら、それこそ、客は寄り付かなくなって、干上がってしまうからだ。

りつ子は、愛よりも絵を描くことを選んだ、と言ったが、これは見え透いたウソである。ウソではないにしても、寅さんに対しては、そうなのだ。つまり、寅さんは、自分のパトロンであり、自分の絵のファン、という風に考えている。「推し」なのだ。

りつ子さんは、三田良助という同業の画家が好きだったようだが、この画家は、金持ちの女と結婚してしまうのだ。おそらく、りつ子さんとこの画家が結婚していたら共倒れになっていたことだろう。
とすると、同じような、甲斐性なしは、惹かれあっても、結婚は出来ないということか。シンパシーはあっても、逆に、それ以上近付けないのだろう。
ということで、りつ子さんは、スペインに行くのだ。資金はどうしたのだろう。間違いなく、大嫌いだと言っていた、画商の一条に、カネを出してもらったのだろう。さらに、実家の方も売り払ってしまったのかも。人生の中で割り切ってしまったのだ。そのぶん、寅さんよりも大人だったのだ。

冒頭の寅さんの夢は、正義の味方になって、悪徳商人から柴又を救う、といった感じだったけど、正義はあっても、力がなければ、正義の味方にはなれないということかな。

前半の家族旅行編は、家族がいなくなってしまった、ということかな。
bluetokyo

bluetokyo