真田ピロシキ

鉄男 TETSUOの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

鉄男 TETSUO(1989年製作の映画)
4.0
たまに削除してるので厳密には違うのだけど500本目になるので思い入れのある作品を鑑賞。若かりし時に本作を見て「映画は何でもありだ」と衝撃を受けて少なからず人生の方向性に影響を受けた。今や俳優としての活動の方が多い塚本晋也監督は監督業では未だに尖った作品を撮り続けていてリスペクトしており、その名を世に知らしめた作品だけに思い入れ込みで満点つけるつもりだったのだけど、いざ見返してみると若い頃の洗練されてなさが感じられて若干退屈な時もあった。

こういう作品は得てしてそういうものだけど、映像重視でストーリー性が薄いので凄い映像は見られるが映画に引き込むものにやや乏しい。爆音ロックが流れてパンクな格好した方々がお目見えするので70分近いMVのような気もしてくる。肝心の鉄との融合が意味する所がよく分からなくて、車で轢いて林に捨てながらその場でセックスしてた事などを考えると人間性の喪失や命への無関心が1989年当時の世相にあったのかな?生まれてはいたけどそんなのが分かるほど成長はしてない。あの彼女をドリルで貫くまでが少し冗長に感じ、コンコンオッサンに至っては何故入れたのかが分からない。2作目と3作目はこれに比べると随分大人しくなっていた反面、ストーリーは整理されていたように記憶している。

映像面は今見ても当時最先端のデジタル技術ではなく古くからの技術で非常にエッジを効かせているので時代の経過で褪せない。ストップモーション、早回し、爆音ロックと忙しそうな要素が入れ替わりで展開されカットはせわしなくてとてつもない情報量の洪水に飲み込まれていく。白黒なのはそんな情報過多の世界に反しているように思えるが、当時の低予算でこの世界に見合った色鮮やかさは表現出来ないだろうし、冒頭の工場街?の描写などに空気の重さを感じ取る事が出来たので結果としては良いかも。あとテツオと言えば『AKIRA』のデコ助野郎が有名だけどあれにもゴチャゴチャモゴモゴ感はあったよね。影響されてる?見たのが随分前なのでうろ覚えも良いとこですが。最終的に融合して世界を飲み込まんとするのも色んな漫画のモチーフとしてありそうな所。これから影響を受けた漫画家はいそうです。この頃はまだ荒削りではあるものの映像表現に興味がある若い人なら一度は見といて損はない。