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エスターのgのレビュー・感想・評価

エスター(2009年製作の映画)
4.0
火事の生き残りである少女。とにかく賢いし、年の割にしっかりしている。お行儀だっていい。首と手首にいつもリボンを付けている、お姫様。人とも、交流する時はする。
そんなエスターとある家族のお話。

3人目を死産し、アル中だった母。10年前に浮気をしていたという父。思春期に差し掛かった長男。そして生まれつき難聴という障害を持つ長女。

そんな決して順風満帆とは言えない家庭に、死産した3人目の代わりに養子を迎えるというのは頂けない。

ということでアメリカの養子制度について調べてみました。

日本では里親に委託されて育てられることは少ないが、アメリカではそういった子供達の約77%が里親に引き取られる。養子として暮らす子供達も特別視されることなく、屈託無く受け入れることが多いそう。

アメリカではそれほど珍しいことでもなく、日本よりも広まっている。だからこそこの映画の母親も死産してしまった子への愛情を、養子として違う子へあげたいと思ってしまった。

しかし、子供が2人もいて、1人は難聴という障害を持つ長女。しかも池に落ちてしまったことがあるようで、母親はそのことで自分を責めている。何よりも気遣いと愛情を注いであげなければならないのは、3人目の代わりではなく2人の子供だということに気づけないのか、それもまた文化の違いなのか…。
だとしても、難しいお年頃の長男と、同じぐらいの年齢の女の子を養子として迎えるところも、おかしいような気がする…。まあ、ピアノのこともあったんだろうけども。

そんな不安定な家庭だったからこそ、エスターは元々家族の中にあった綻びを突いて崩壊させて行くことが出来た。不安定さを埋めるために迎えたエスターに崩壊させられていくなんて、皮肉です。

エスターという少女が恐ろしい、というだけの話ではなく、ミステリー要素も、家族のことを考える社会的な要素もある、非常に奥が深い映画でした。
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