唯

父親たちの星条旗の唯のレビュー・感想・評価

父親たちの星条旗(2006年製作の映画)
3.4
公開当時、第二次大戦をアメリカ側と日本側から描いたとして話題になったが、戦勝国と敗戦国とではあらゆることが異なる。

まず、敗戦国について取り上げる時、大概は戦場での真っ只中を映すのに対して、戦勝国側に於いては、戦地を離れてからの兵士の苦悩と葛藤を描いている。
たまたま国旗を掲げただけで英雄扱いされた彼らは、世間からの認知と実際の自分との乖離とに苦しんだであろう。
その立場になくとも、戦地で多くの友を失った兵士達は、どうして自分が生き残ってしまったのかと問い掛けざるを得なかったはず。
生きて還れたのは何らかの使命が残されているからだと思いたくなるが、それを本人に自覚させ背負わせるのも酷な話であって。
PTSDの概念も無い時代、人々の理解も得られないまま、呵責の念と戦場での酷い記憶に苦しめられたのだろう。

日本側とアメリカ側とのもう一つの大きな違いは、国本土が戦地になったか否かであろう。
一般市民までもが無惨に殺された日本と違って、アメリカでは、同じ国民であろうと、戦地へ行っていない者は戦争を知らない者でしかない。
彼らに当事者意識を持たせるのも無理な話であり、戦争をビジネスや虚栄心に利用しようとする身勝手な輩に過ぎない。
部外者の無知とは恐ろしく、大抵の人間は物事の表面しかなぞらないし、相手の人生やバックボーンまでは考えない。
人は皆、自分のことでいっぱいいっぱいだし、そこまで想像していては自分が苦しむことになる。
一つの事実や真実をどう捉えるかは人それぞれなのだ。

『アメリカンスナイパー』を観た後なので、イラク戦争の鍛え上げられた軍人とは違う、ヤワで幼稚な兵士らを同じ一市民として捉える。
戦闘シーンは、これが映画でなく現実だったなんて考えたくないという想いに駆られた。でも、本当にあったことなのだよなあ。
唯