愉悦のために殺人を企てたかの様な、得意げで余裕綽々と殺人論を語るトニーが薄気味悪い。
犯人には、完全無欠のトリックもさることながら、するりするりと交わしていく論弁術が必至である。
こうした犯人主体のミステリーは好きだなあ。
何故だかトニーを応援したくなってしまう自分がいる。
だが、実際の殺人は推理小説の通りにはならない。
警察や探偵の仕事とは、ほんの小さなたった一つの綻びを見つけ出すことにある。
マーゴの不倫やその人格を深く掘り下げないから、そこまでの悪感情も抱かないが、不倫しておいて清廉潔白の様に振る舞うのはどうなのか。
クラシック音楽の煽り方が最高。
どこまでも品のあるキャラクター達の振る舞いも粋である。