継

ぼくの伯父さんの休暇の継のレビュー・感想・評価

ぼくの伯父さんの休暇(1952年製作の映画)
4.0
日常の何気ない1コマを切り取って笑いに変える。
チャップリンへの憧憬はそのままに、避暑地の海岸沿いのホテルに開襟シャツと白いパンツでやって来た、ちょっとお洒落なユロ氏です。

テニスラケットの扱いやすさを示しただけの店員の仕草を、見よう見まねでサーブのルーチンにする、そのフォームのヘンテコなリズムの可笑しさ

両手にアイスクリーム持った子の、微笑(ほほえ)ましい可愛いらしさ

真中で折れて沈む小舟は、ちゃんと牙まで表現されて芸が細かくて、でもジョーズより寧(むし)ろ「ぼくの伯父さん」の魚型の噴水みたいで、水を吹くのかと思ったけれど、そうかコッチのが先なんですね。

誰も参加していない仮面舞踏会で気恥ずかしい面持ちのレディに恥をかかせない、仮装海賊ユロ氏の優しさが粋で良いです。
そして、この様子を窓越しに見守るのが、街を散策する奥さんにずっと着いて歩いていた老紳士。

実は、本作は後にノヴェライズされてストーリーはそのままに日記を綴る形式へ再構築されるのですが、その日記の主がこの老紳士で。
ジャン=クロード・カリエールという、ブニュエルを始め数多くの作品を手掛ける名脚本家の著作で、
「散策してまわる」キャラクターから着想を得たのでしょう、ホテル到着からユロ氏に注目し興味を抱いた、その一人称の視点で書かれたストーリーは本作を立体的に下支えするようで、脚本家たる才と本作への愛が香る興味深い著書でした。
以前レビューしたトム・ストッパード『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』も同じ着想で、案外ヒントはこの辺りか?なんて邪推するのも楽しくて(^-^)。

映画のラストになって初めてユロ氏に声をかけて名刺を差し出す、唯一の共演シーンがある老紳士。
実は、ノヴェルでは「妻のお供の退屈なバカンス」と鷹を括っていた彼がユロ氏の奮闘で思いがけず楽しい日々を過ごせたその御礼に、勇気を振り絞って声をかけるというクライマックスになっていて、その辺りを鑑(かんが)みて読後に改めて観賞すると一味違う感慨が湧くという仕掛け(o^-')b !
足りないわけでないけれど映画と小説の互いを引き立たす補完関係が垣間見られる、ちょっとユニークで愛着ある作品です。
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