ひかる

パブリック・エネミーズのひかるのレビュー・感想・評価

パブリック・エネミーズ(2009年製作の映画)
4.0
1933年(第二次世界大戦前!)を舞台にしながら、デジタル撮影とカメラのフットワーク、スピーディーだが的確に登場人物の移動を捉えていく編集など、マイケル・マンのシグネチャーしかない画面に「時代感」は皆無。1933年という舞台(美術や時代背景)とマイケル・マンの作家性がせめぎ合う様子はスリリングであるーーと思いきや、ラストで舞台は映画館となり、1930年代、ハリウッド黄金期への言及がなされる。つまり、1933年から始まり、1934年のジョン・デリンジャーの死で終わる物語に、1934年に制定されたヘイズ・コードの文脈を重ねたのである。暴力に生きた男がスクリーンから消える運命を、映画史の引用で描くラストにおいて、現代劇としての1933年が急に「過去の郷愁」に包まれ、そのまま幕を閉じるのは見事としか言いようがない。
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