ひかる

アラビアのロレンス/完全版のひかるのレビュー・感想・評価

5.0
「スーパーパナビジョン70」のアスペクト比1対2.20の画面が「砂漠」を象徴化していく。スクリーンは風景を限定的にするが、ここには見渡す限りの「砂漠」がある。人の姿すら点としか見えないように撮影された広大な砂漠、そのマクロな世界と対比されるのは、どこまでもミクロな主人公。ここにはマクロとミクロが一瞬で交差する映画の魔法がある。それは宇宙的といっていい。砂漠と対比される主人公ロレンスのドラマは、史実を超えた普遍性を獲得している。ロレンスにLGBTQの文脈を当てはめることが、名言をされてないことからムリだとしても、ここにはマイノリティとしての孤独がたしかにある。男しか登場しない「男たちの砂漠」としての街の風景と、ロレンスが自由を求める「砂漠」、そして、そのどちらにも居場所がないロレンスが、冒頭のバイクのシーンで、風の中の疾走の中に居場所を見出した表情である。『市民ケーン』の薔薇の秘密的なオープニングでありながら、ロレンスの秘密は最後まで明かされることはないのだーー。
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