ひかる

101匹わんちゃんのひかるのレビュー・感想・評価

101匹わんちゃん(1961年製作の映画)
3.8
1961年制作だとは驚きである。この頃のディズニーアニメーションに詳しくないため、他の作品と比較出来ないのが残念。記名性のある背景(明確に引用元の作家がいる?)とキャラクターたちのアクションが完全に分離しており、カメラの動きも限定的だが、それが形式として実に美しい。舞台は60年代のパリで、ジャズミュージシャンが主人公、アパートの一室からスタートしている点で『巴里のアメリカ人』を彷彿とさせ、当時のアメリカからパリへの眼差しが透けて見える。音楽使いもジャズを基調に気が利いており、出産シーンの時計の針はまるでハイハットのようである。ベタに“赤い糸”で結ばれる飼い主2人の子供の物語は当然のように排除され、テレビを眺める当時の一家団欒シーンを犬たちで描くスゴさ。そもそもタイトルよろしく、この数の犬たちをアニメーションで描くという無茶さには脱帽。3Dアニメーションでのカーアクション、原画のセルのコピー複写機の導入など、とにかく動きの点で目が嬉しい。「魔女は煙である」という美学もディズニーならではか。クリスマス映画として、着地は『素晴らしき哉、人生!』である。

犬情報網のシーンが退屈である点、冒頭での女性を眺める視線はアニメーションならではのルッキズムの暴力があるあたりは時代を感じる。
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