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パブリック・エネミーズのGreenTのレビュー・感想・評価

パブリック・エネミーズ(2009年製作の映画)
3.0
FBI に「パブリック・エネミー・No.1」と呼ばれた銀行強盗のお話です。

ジョン・デリンジャー(ジョニー・デップ)は、シカゴを拠点とするギャングで、国内の色んな州で銀行強盗をして生計を立てている。

1930年代のアメリカなので、ギャングはみんなスリーピース、ウールのロングコート、フェドーラ・ハットという服装。脱獄するときにも帽子を探す(笑)。

この頃FBI ができたばっからしく、フーバー長官はジョン・デリンジャーがあちこちで犯罪犯しまくり脱獄しまくっているのに捕まえられないのが悔しいらしく、FBI の威権をかけて、メルヴィン・パーヴィス捜査官(クリスチャン・ベール)にシカゴ局を仕切らせる。

この映画は元々、TVミニ・シリーズにしたかったようで、長い!140分ですよ。ジョン・デリンジャーってのは実在したギャングで、カリスマチックで世間では人気があったらしい。

っていうのも、銀行強盗して逃げるときに人質を取っていくのだが、その人たちを殺したことがないらしく、また人質が開放されたあと「面白い人だったよ、デリンジャー」みたいに語るかららしい。あと、銀行強盗している最中に、客のはした金は「それは盗らない。一般の人の金を奪いに来たわけじゃない」とか言う。

逮捕されたときも、マイクを向けられてユーモアのあることを言い、それがTVで放映されたりとか。

なんですけど、この人のそういうアイコニックなエピソードがたくさんありすぎて、それを描写するのに忙しく、この人の本当のひととなり、みたいなものがあんまり解らない。

「カリスマチックで世間で人気あったらしい」ってのも、あとからウィキを読んでなるほどって思ったことで、観ているときは「なんか気軽に犯罪者にインタビューしてんな〜」とか思ってるだけだった。ウィキによると、大恐慌時代でみんな貧しかったから、デリンジャーみたいな人は「自由に生きている」みたいな、今で言うロックスターやアクション・スターみたいな立ち位置で憧れられていたらしい。

で、FBI は評判悪い時だったから、フーバーがそれを挽回しようと頑張ってたらしいんだけど、パーヴィス捜査官はFBI の実力ではデリンジャーに敵わないってことがわかり、フーバーにもっといい捜査官を送ってくれって頼むんだけど、そういう人がFBI にいないのか、それともデリンジャーの件は「パブリシティ」、要するにFBI の宣伝のためだけなのか、人を回して貰えなくて、パーヴィスはFBI の欺瞞に愕然とする、と。

これも、DVDに付いてたクリスチャン・ベイルのインタビューを聴いてなるほどと思ったけど、劇中ではそんな風に感じられなかった。時々パーヴィスが長い間出てこなかったり、デリンジャー対パーヴィスって構図なんだとかってハッキリ解らない。

あ、あと、デリンジャーはビリー・フレシェット(マリオン・コティヤール)に一目惚れするのだが、それもなんでいきなりそんな好きになったのかも解らない。映画の最初の方で、キャリー・マリガン演じる娘ともなんか関係ありそうな感じだったのに、あれはなんだったんだ?とか。

大恐慌でみんな貧しかったっていう雰囲気もあまり良く解らなかったしなあ。つまり140分、デリンジャーの「逸話」をぶつ切りで見せられたって感じ。

あ、でも一つだけ解ったのは、もう銀行強盗ってのも古くて、犯罪者仲間が助けてくれなくなった?(あのコールセンターみたいのでどーいう犯罪をするのかわからんけど)。なのでデリンジャーも、これから身の振り方を考えなくちゃいけなかったみたい。

なんでタイトルが “Public Enemies” って複数なんだろ?って考えたんだけど、デリンジャーだけでなく彼のギャング全員ってことなのかなあ?

面白いなあと思ったのは、すっごいいちいち劇的にメロドラマチックな音楽をかけて盛り上げるところだったんですけど、ギャングたちが死ぬときの「最後の一言」にこだわるところが時代を感じさせる。プリティボーイ・フロイドってギャングが死ぬ時、 “I believe you killed me…. So you can go rot in hell” (お前はすでに俺を殺した・・・地獄で腐りやがれ」って(笑)。

私は『レザボア・ドッグス』のティム・ロスが撃たれた時の描写に衝撃を受けた人なので、「こんな死に際にカッコつけて決めゼリフを残せるもんなのか」と思った。

デリンジャーも決め台詞があるのでお楽しみに。
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