ふき

パトリオット・ゲームのふきのレビュー・感想・評価

パトリオット・ゲーム(1992年製作の映画)
4.0
ジャック・ライアンシリーズの映画化二作目。ジャック・ライアンを演じるのはハリソン・フォード氏。

原作の『愛国者のゲーム』からポリティカルサスペンス要素が大幅に後退し、娯楽性の高いサスペンスアクションとしてまとめられている。
イングランドの貴族がIRAテロリストに襲われるという政治的な事件から始まるが、かなり早い段階でショーン・ビーン氏演じるショーン・ミラーの個人的な復讐と、それに対抗するジャック・ライアンのお話になるので、進めば進むほどスケールが小さくなっていく。また原作のとある大きな要素をオミットしたことで、CIA分析官としての活躍も減ってしまい、ジャック・ライアンシリーズとしては正直物足りなさを感じてしまう。

では本作がつまらないかというと、まったくそんなことはない。
まずハリソン・フォード氏のジャック・ライアンは、アクション要素を強めたキャラクターとしてはいい具合で、本作の方向性にあっている。ファミリーマンな面とアウトロー的な面を併せ持つ顔で、テロの悲劇によってテロリストと同じくらい恐ろしい表情にシフトしていく主人公像を見事に演じている。
テロリストのキャンプに攻撃を仕掛けるCIAも、同じ面白さがある。ジャック・ライアンの不十分な分析結果で攻撃を実行する様は、どちらが正義なのか分からない。むしろその状況を衛星からのモニターで見ているという距離感が、より自覚のない恐ろしさを体現しているように思う。

はっきり台詞に出しては語られないが、本作が描き出す“正義”の恐怖は、原作とはまた違う味わいがある。
これをアレック・ボールドウィン氏が演じていたら、もっと暗く、救いのないトーンになっていたかもしれない……か?
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