ふき

ハッピー フィートのふきのレビュー・感想・評価

ハッピー フィート(2006年製作の映画)
3.0
歌は苦手だがタップダンスが得意なコウテイペンギンが、魚の減少の謎を解いて群れを救う動物ミュージカル作品。

本作はまあとにかく動物が可愛い。CG技術がふんだんに動物の再現に使われ、コウテイペンギンのヒナと成体、アデリーペンギンのなにを考えているのか分からない顔付き、ヒョウアザラシを始めとする「実は怖い海洋生物」感が、本物を思わせるモーションや生態で描かれているから、最高に可愛い。
擬人化強めな主人公たち以外のペンギンが、基本的に普通の動物とも見える動きをしているのもポイントが高い。マンブルがタップダンスしてグロリアが歌ってるのに、背景のモブは身体を左右に揺らすだけで「お前ら絶対楽しんでねえだろw」と何度思ったことか。
マンブルのタップダンスは、ヒナの状態だと足が短い&ヒナ毛がフワフワなせいもあって絵的な驚きはなかったが、成体(半成体?)になったあとは脚がバリバリ動いていい感じに。
私は寒いところと鳥が好きなので、その点で本作は見所が多い作品だった。事前に『皇帝ペンギン』を見返して本当によかった。

なのだが、お話は全体的に不満だ。
筋立てはいいのだが、見せ場の密度が低い。序盤の「歌は苦手だけどタップダンスは得意」、中盤の「アデリーペンギンとの交流」と「群れを追放されてからの旅」、終盤の「魚を奪っていくエイリアンを何とかする」のどれも、もうひと盛り上がりが欲しかった。会話シーンや映像は楽しいだけに、見せ場的なミュージカルシーンやアクションシーンになると「これまだ続くのかなー」と退屈になってしまう。
「歌は苦手なマンブル」と「魚を奪っていくエイリアン」の件が、中盤までは一度にどちらかしか語られないのも、お話全体が一つの終着点に向かって行っていないように見えてしまう。
あと、序盤でラップが出てきた時には、「歌が“上手い”とは何か」を掘り下げてきそうだと期待したが、全然触れられなくなってしまうのも残念。まあそれで言ったら、歌もタップダンスも掘り下げていないのだが。
「お話の構成が『マッドマックス』と同じ!」というのは分かるが、それが分かったところで別にお話が面白くなるわけでもない。

あとは、マンブルくんの歌声を普通のコウテイペンギンの鳴き声にして、それを「下手」と言わせるのは、鳥好きとしては、うん……。
ふき

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