矢嶋

銀河英雄伝説外伝/新たなる戦いの序曲(オーヴァチュア)の矢嶋のレビュー・感想・評価

4.2
前作にあった魅力は健在。作画レベルは高く、ラストの環状陣形の航跡は特に美しい。クラシックによる重厚で格調高い雰囲気もやはり魅力的だ。
最初の戦役として何度も映像化されているアスターテ会戦だけあって、話がシンプルに面白く、ラインハルトとヤン双方の能力が遺憾なく発揮されているのも心地よい。

前作はキャラの背景が多く語られなかったことにより、彼らが歴史上の人物に見える面白さがあった。一方で本作は続編ということもあり、キャラものとしての魅力がある。

この時点では脇役でしかないが、ある程度の存在感を示すメルカッツやファーレンハイト。ラインハルトと同等の能力を持ちながら、彼にない休暇や降伏勧告といった観点を持つキルヒアイス。
前作のラインハルトは完全無欠のカリスマのようだが、姉に接した時に彼の素顔が伺える。この時の無邪気な表情が、彼の二面性を表している。

パエッタは終始無能な描写だが、彼なりにヤンを認めるべきではないかと思い、やはり理解しがたいという苦悩が伺えた。
ヤンはやはりジェシカを巡る三角関係が魅力。ダンスシーンやその後の別れ等、大人でロマンチックな雰囲気がよい。古典的といってもいいが、やはり悲劇的な展開も印象に残る。

ヤンとラインハルトの対比も明らかになる。ヤンがずぼらだという面もそうだが、野心のまま駆け上がりつつあるラインハルトと、思うように指揮もできないヤンは対照的。これは苛立たしい展開であると共に、どこまでも民主主義に誠実であろうとするヤンの魅力が分かる要素でもある。

総じて、前作の魅力を受け継ぎつつ、シリーズものとしてキャラの内面という新たな魅力が付与された名作と言えるだろう。
矢嶋

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