きねぼっち

キャバレーのきねぼっちのネタバレレビュー・内容・結末

キャバレー(1972年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

これはすさまじい映画を見てしまったな・・・。

ミュージカル映画のはずなのに、俳優のパフォーマンスを見せるために全身を撮ったりはしないので、ぜんぜんのっぺり感がない。
カメラはトリッキーな角度から超アップで俳優の一部を切り取ったり、俳優に負けじと動いて、超ダイナミック。
まーとにかく、迫力のある絵ヅラには終始圧倒されっぱなしでした。

ライザ・ミネリの個性的なルックスやファッションもすごいインパクトでしたね。
当時のあの髪型ってはやりなんですかね。ジョセフィン・ベイカーも似た感じでしたし。

にしても、ストーリーも素晴らしかった。
キャバレーの歌姫とケンブリッジ大卒のインテリという、普通なら絶対にくっつくはずのない対照的な二人が偶然に育んだ刹那の恋。
それが、崩壊直前のワイマール共和国と重ね合わされていて、印象的でした。

ワイマール共和国は、敗戦から回復したかと思ったらハイパーインフレ、さらに世界恐慌などの苦難続きで、国内は共産党やナチスがひっかきまわし、フリッツ・ハールマンという猟奇殺人者などが跋扈するという完全なモラル崩壊に見舞われる一方、文化はまあなんかすごく花開いたらしいです(よく知らない)。

インモラルな土地でこそ奇跡的に結ばれた歌姫とインテリのカップルも、大金持ちの遊び人が絡んでくるに至って、たちまち危うくなり、なんとかヨリを戻すも、結局平穏の中では彼らの仲は続かない。

ラスト、ライザ・ミネリは「人生はキャバレー」と歌いますが、あたかも一夜の興行の如く、彼女が享受している文化も、ナチスに「頽廃芸術」と蔑称され、急速に地上から消えてゆくわけです。
オットー・ディックスもその一人で、彼の作品っぽいショットが劇中にもあったような気がします。

とはいえ、ストーリーもいいけどやっぱりライザ・ミネリの歌やダンスのすごさが際立っていました。
ほとんどミュージカル映画って感じではないけど、やはりこの映画はまさしくミュージカルと言うことなんでしょう。

ちなみに、遊び人を演じていたヘルムート・グリームですが『地獄に落ちた勇者ども』でSS将校役で登場しているとのこと。
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