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ニューヨーク東8番街の奇跡のNMのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

原題『*Batteries not included』(※電池は付属していません)がどういう意味なのかも知らなかった初見者。
名作ということぐらいは知っているので教養のため視聴開始。
家族で観れそうなほっこり心が暖かくなる作品。ストーリーはわかりやすくて、難しいことを考えずリラックスして観られる。子どもでも楽しめるだろうが、大人にしか分からないネタも。ファンタジーだが現実の哀しさも描いている。
こんな話だとは知らなかった。とても良い話。クリスマスシーズンなどにも良さそう。
とにかく終始立ち退き屋のやり方がむちゃくちゃで面白い。ちょっとホームアローンを思わせるし、ドアなどシャイニングよりあっさりぶち抜く。

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80年代。再開発最盛期。
この町でもビル群が次々と壊されていく。かなり大規模な開発が行われるようだ。
あたりは見渡すかぎり瓦礫の山。雇われチンピラがのさばり、残っている住民たちに少しの札束をチラつかせつつ今すぐ立ち退けと一日中嫌がらせをする。話し合う気はなく家や店を破壊してまわりやりたい放題。
警察すら知らん顔。

高齢のフランクも、夫婦で営んでいたダイナーを守るため居座っている。今は商売どころではない。
妻のフェイはというと認知症らしくあまり事態を把握していないので、割りと明るく過ごしている。
彼女の世話には手間がかかるが、その笑顔に救われることもある。

このアパートにいるのは夫妻の他は三人だけに。
彼女に出て行かれた売れない絵描きメイソン。
巡業でさっぱり帰らぬミュージシャンの恋人を信じて待つ妊婦のマリッサ。
元ボクサーだが寡黙で心優しいハリー。

昼間は抵抗に必死だが、夜一人になると辛さに襲われる。
フランクは一人涙を堪えながら、誰か助けてくれ、と呟いた。

疲れて眠りにつくと、窓から小さな円盤が入ってきた。直径20~30cm程度だろうか。
中に誰かが乗っているようには見えない。それ自体が意思を持っている。前面の2つのライトはまるで目のように表情がある。
動きはまるで小動物のようで、部屋を見渡して飛び回る。
そしてコンセントプラグを発見。窓をこじ開け仲間の円盤を呼んだ。
もう一機のほうは何だかフラフラしている。プラグの前に着地し、手のようなものを出してプラグに差し入れると元気を取り戻した様子。
円盤たちは部屋を出る前に、昼間チンピラのカルロスに割られてしまったガラスの写真立てを不思議な力で直していった。

他の住人の部屋にも不思議な足跡を残していった。壊れたドア、荒らされたタイル地、割れたマリア像などがそれぞれ元通りに直っていたのだ。
朝になり驚いた住人たちが部屋を出てくると住民たちは改めて挨拶を交わした。
近所付き合いはほとんどなかったようだ。
屋上でフェイの声がし、フランクたちが上がってみると、今は使われていない鳥小屋にそれぞれの部屋から無くなった家電やフライパンなどがあった。
フェイはその場で時計を壊してみせると、円盤たちが出てきて元通りに直してくれた。
住人たちはそこで初めて事態を理解。

そしてめちゃくちゃにされたフランクの店は新店のようにピカピカに。円盤たちはアパートをあちこちを直して回った。
昨日店を壊した男カルロスがやってきたが、不思議な現象に驚いて逃げ出す。

住人が円盤を観察すると、機体の一部に自分のコーヒーポットが使われていることを発見。そうやって自分のことも修理していたらしい。
そしてこの二機はどうやら愛し合う関係らしいことも分かった。
生命維持に必要なのはちょっとした金属や電力などらしい。

ある日二機は出産を迎えた。機械でもあるがやはり生命体とも言えることがはっきりわかった。
元気な円盤が二機生まれたが、小さな三機目は動いていない。
ハリーはそれを見て「Batteries not included(電池が入ってない)」と言った。
親円盤は悲しそう。
ハリーはその遺体を部屋に持って帰り修理を試み、見事蘇生させた。

フランクは綺麗になった店で再び営業開始。ハンバーガーが旨い店で、作業員たちがこぞって訪れた。この作業員たちはゼネコンにとはまた違う立場なのか実際はむしろ気のいいやつら。
忙しい厨房を裏で手伝うのは円盤たち。フェイもウェイトレスとしてオーダーを的確に処理。二人で長年営んできた店なのだろう。

この大規模開発を進めるゼネコンに雇われているチンピラ、カルロスは追い込まれてしまった。期限が3日後らしい。一攫千金を夢見るカルロスはなんとかこのビッグチャンスを掴みたい。
カルロスはあのアパートに何だか分からないお化けがいると仲間に知らせたが、仲間は全員去ってしまった。

夜、地下の設備室へ忍び込んだカルロスが斧を振り回し、水道管やら電気ヒューズやら破壊して回った。
カルロスの仕業だと察して降りてきた住人たちと円盤たち。
すると親円盤の一機がカルロスに斧を振り下ろされ大破。
カルロスは怒ったハリーにドアからポイと投げ捨てられた。

フェイは息子の記憶を書き換えているらしいことが分かる。優しい人で、辛い思いをしたからこそ円盤にもカルロスにさえも愛情を注いでいたのだろう。

この騒ぎで子円盤たち三機が驚いて外へ飛び出してしまった。迷子になったに違いない。みんなで探しに出る。
残された片方の親円盤は大破したもう一機を直すべく屋上で必死で修理を試みていた。やがて無事蘇生。
留守番して見守っていたフェイはそれを確認すると親円盤たちに子円盤たちを探しに行かせた。
円盤家族は無事再会したが、流石にもうどこかへ旅立ってしまったようだ。

留守にしている間、今度はアパートに爆弾が仕掛けられた。
カルロスはそこにフェイが残っていると知り、必死に助けようとする。フェイだけは息子と勘違いしただけだが自分に優しくしてくれた人だった。
フェイは無事、アパートは炎上し崩れ落ちた。

ハリーが焼け跡に座り込んでいると、夜中、円盤家族と仲間の円盤が大勢かけつけた。
翌朝、アパートは前以上の立派な建物となっていた。
マスコミも殺到。作業員たちも嬉しそうに見上げている。
開発計画自体は続行され高層ビルがたくさん建ったが、その後もこのアパートはビル郡の合間に小さくも堂々と立ち続けていた。
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ラストもとても良かった。
奇跡で住処の危機は超えたものの、過去の消えない傷までは修理できない。
カルロスはとっさに命を救ったが、それ以上罪を償う機会は与えられなかった。反省したところで自分にできることはもう何もない。最後だけは現実的。

「奇跡というものはあれこれ考えると消えてしまう」というセリフにも妙に納得。素直に受け入れておけば最大限そこにとどまってくれるような気はする。


ニューヨークマンハッタン8番街……南から北へ伸びる一方通行ストリート。ここを境として東側にはタイムズスクエアやブロードウェイがあり、西側には地元に根付いた店々や感性豊かな若い住人も多い。
機……円盤の数え方がよく分からないので飛行機等に倣って機としておいた。基は動かないものの数え方らしいので避けてみた。
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