純

25日・最初の日の純のレビュー・感想・評価

25日・最初の日(1968年製作の映画)
3.6
台詞はほぼなく、抽象化された灰色または黒色の世界で、激しく疾走する赤が映える。

旧ソビエトにより搾取された当時の労働者たちが生きる、陰気で無機質な灰色の街にぽつんとたたずむ十字架が映るところから本作は始まる。灰色は、何かを失ってしまった抜け殻のような印象を与える色で(ミヒャエル・エンデ作の『モモ』においての灰色の男たちもそう)、不安を掻き立てる効果がしっかりと描かれていたと思う。常に暗く重い空気のある広場が、10月のロシア革命を機に真っ赤に染まり始める。民衆が支配者階級を打ち倒す様子が捲したてるような赤で表現されていて、暴力的な言葉もないのにただただ恐怖にかられた。

そう、この作品は、旧ソビエトを批判しているわけでも、民衆の勇敢さを称えているわけでもない。私の個人的な印象ではあるけど、あくまで客観的な立場から、抽象的に革命の最初の日を描いている。確かに旧ソビエトの作り上げた世界は重苦しいけど、かと言って民衆たちの衝動的で抑えることは不可能に思われる狂気的なほどの革命への動きも、違う意味で怖い。はじめは静かにスローペースで進むけど、革命が始まったとなると、労働者、聖職者、権力者、兵士、様々な立場の人間が目まぐるしく動く。攻める。隠れる。衝突する。進む。退ける。立ち上がる。逃げる。倒す。鮮烈な赤が一種の恐怖とともに縦横に上下に揺れて、革命時の混沌さ、激しさを十分に感じさせてくれた。単調にならない映像の工夫だけでなく、スピード感の緩急もかなりすごい。12分という短い時間の中で尺のバランスが非常によく取れていて、流れが分かりやすくかつ起承転結がしっかりしているし、音楽についてもこだわり抜かれている。また、時折映る広場の十字架の像が不気味さや、静と動の対照的な様子を効果的に示してくれていた。

恥ずかしながらロシアの歴史についてはうろ覚えだけど、灰色の街が憤る労働者たちにより赤く染まっていく様子は、世界で初めての社会主義国誕生に向かって闘ったロシアにとっての最初の1日が、どれほど歴史的な大きな出来事であったのかを感じさせる。まさに圧巻のアートだった。政治的側面が強く、大人向けのアニメではあるけれど、圧倒的技術と芸術センスが12分間のすべてのシーンで表れている、圧倒的作品だ。
純