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シャー・ルク・カーンのDDLJ/ラブゲット大作戦のBaadのレビュー・感想・評価

4.3
「愛しい人よ君を見て僕は知った
愛することは狂おしいことだと・・・」

大ヒットしたこの歌のままに、ロンドン在住のインド人学生グループ同士の卒業旅行で知り合った婚約者のいる恋人シムランとの結婚を相手の家族に認めてもらうため、周囲を巻き込んで突き進むお調子者のラージ。

故郷のパンジャーブ地方に住む何の罪もない婚約者の家族まで巻き込んで筋を通そうとする誠意にはよくわからない部分もあるけれど、顔を見たこともない親の決めたお見合い相手との結婚が主流の当時の(今も?)インドで、恋人を追いかけてきたパンジャーブ地方の草原で「僕たちはここからどこに行くのだろう、君の腕のなかで死にたいと願う」といきなり飛躍して歌ってしまうこのテンション高さには今見ても驚いてしまう。

青春映画としては90年代のトップヒットとなったこの映画は今もロングランを続けているが、マサラムービー的な格闘シーンがある青春恋愛映画はこのあと少なくなり、ボリウッド映画の恋愛ものは一時洗練への道をたどる。

筋を通して周囲に迷惑をかけたおとしまえは一族郎党を巻き込んでの格闘でスッキリ解決、というマサラ的な単純な筋書きも踏襲している作品だが、インドでも豊かで保守的な州と言われるパンジャーブ地方の家族のあり方や結婚式の風習などが華やかなダンスやコメディーシーンとともに綴られるこの映画は陽性のエネルギーに満ちあふれていてなんだか憎めない。

「Baazigar賭ける男」からゴールデンコンビと言われていた主演カップルのカジョールとシャー・ルク・カーンはこれで不動の人気スターになるが、wikiによればラージ役はシャー・ルク自身も気が進まなかったものの、先にオファーを受けたサイフ・アリー・カーンの勧めもあって決まり、スクリーン上での相性のいいカジョールがヒロインに起用されたという。

二人の演技の掛け合いはBaazigarの方が良かったようにも思うのだが、シャー・ルクとその父親役のアヌパム・ケールのコメディー演技の冴え、イギリスで暮らしていても故郷をわすれないシムランの頑固者の父親(アムーリッシュ・プーリー)の存在感、夫婦愛が感動的。

NRIであっても、大学を落第してしまうお調子者であってもパンジャーブ地方出身者としての誇りを忘れず、年長者を敬う今時の若者が主人公というのがヒットの理由なのかとも思うけれど、一方で親の子供への思い、子供の親への思い、家族それぞれの性格が丁寧に描かれているところがこの映画の最大の魅力。この辺は、脚本家としてのアディティヤ・チョープラーの本領発揮というところだろう。

日本公開時、大阪の梅田東映パラスの大きなスクリーンで見て、結構人が入っていた記憶があるが、これは関西だけの現象だったのだろうか。

ロンドンで鳩に毎朝えさをやり、故郷の畑でも鳩にえさをやるシムランの父親の姿と、サリーの売り買いのやり取りが強烈に脳裏に焼き付いていましたが、今回は、シムランの両親が婚約式でダンスするシーンにほろっと来ました。(劇場/iTune Storeレンタル)(2014/3/25記)
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