Mikiyoshi1986

ソドムの市のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

ソドムの市(1975年製作の映画)
4.0
1975年の今日、凄惨なリンチによって非業の死を遂げたピエル・パオロ・パゾリーニ監督。
その凶行を生む切っ掛けとなった彼の遺作「ソドムの市」はマルキドサドの小説「ソドム120日」を基にナチス崩壊間近の北イタリアを舞台にしており、権力批判のありとあらゆる風刺を大々的に詰め込んだ、言わずと知れた超問題作であります。

本作の強烈なイメージからパゾリーニ監督を頭のおかしい自業自得の変態作家と忌避する方も多いと思いますが(全然間違ってない)、
共産主義者であり無神論者であるパゾリーニはあくまでも静観なる眼差しでこの鬼畜映画を撮っている趣があります。
もちろん彼は同性愛者かつ筋金入りの変態野郎だったため、サド公爵へ親近感を抱きながら本作に着手したことと思いますが。

性と暴力の世界をブルジョワ・ファシズム批判と織り交ぜ、大統領・公爵・最高判事・大司教の変態4人組が美少女美少年を異常性欲の奴隷として尽くなぶりものにしてゆく約2時間。
前作の「生の三部作」を自ら否定してまで、本作に込めた思いとは何だったのか。

原題にもある「SALO」とはファシズム指導者ムッソリーニがドイツ軍の支援で(半ばヤケクソで)北イタリアに樹立させた傀儡国家サロ共和国のことであり、
ここにはファシスト党の軍人だった父親への憎悪、そして反ファシズムのパルチザンとして戦死した最愛の弟への哀悼が原動力ともなっていそうです。

目を背けたくなるような、あまりにも非人道的内容には不快感を禁じえません。
特にスカトロのくだりとかまじで無理…。
このスカトロジー描写を「資本主義体制における消費社会批判」に繋げている所とか、もう常人では絶対に生まれない発想です、はい。

パゾリーニが殺害されてから40年後、この事件は被告人の新たな告白によって複数のファシストによる犯行であることが明らかになりましたが、
これこそ変態芸術家パゾリーニが本作で示したファシズムの恐ろしさであり、彼は図らずも身を呈してその信憑性を証明したことになったのです。
ご冥福をお祈りします。
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