blacknessfall

L.A.コンフィデンシャルのblacknessfallのレビュー・感想・評価

L.A.コンフィデンシャル(1997年製作の映画)
4.0
原作がカルト的な人気作だとどんなにうまく映像化しても色々言われちゃうよね。これも原作はノワール金字塔で作者もアメリカ文学界の狂犬の異名を持ち熱狂的な
ファンの多いエロルイだし。うるさいファンがたくさんいるはずなんだよ。何を隠そうおれもその一人なわけで。

エロルイと言えばこれでもかってぐらい入り組んだプロット。その絡み合った糸が全てほどけた時に現れる恐ろしくおぞましい陰謀、個人の恩讐を越えて社会の腐敗を炙り出す絶望的に呪われた世界観で読者を漆黒のどん底に突き落とす猛毒のような作家性が持ち味。

なので登場人物は多かれ少なかれうしろ暗い悪事に手を染め後悔と諦観持ちながら呪われた運命への怒りに神経を焦がされて破滅する。ノワールが運命に見捨てられた悪人の歪んだ自意識や狂気を描き出すものと規定した場合、エロルイはノワール中のノワール、キング・オブ・ノワールな存在。

ベストセラー小説とは言えこれをハリウッドがどう料理するか、てか、料理できねえだろうと高を括ってたけど、思いの外うまく映画化してて驚いた。

改めて観ても英断だったと思うのは原作の醍醐味である黒さや割り切れなさ、登場人物達の複雑で病んだ自意識をバッサリ廃して、入り組んだプロットを中心に据えミステリーとして推進力与え、主人公3人の刑事達のキャラを女性に優しい側面を持つはみ出し暴力刑事、マスコミと癒着するお調子者で快楽主義の刑事、秀才タイプの若きエリート刑事とエンタメ的に分かりやすいキャラに改変し、この3人が反目しながら徐々に信頼を築き、警察内部のおぞましい悪と対峙するというシリアスなバティ映画に仕上げたこと。

原作とは比べものにならない軽さではあるんだけど、どう考えても原作のどおりやったら中途半端になって空中分解したと思うから。上澄みとは言えエロルイの狂的で退廃的な呪われた世界観を描き出してはいるし、何より原作をまったく知らない人が観ても理解できるように構成してるのが素晴らしい。

変にファン向けに作ると物凄く長く複雑な話だから原作未読の人が置いてけぼりなる閉じた映画になってしまったと思うから。
それぐらいならエッセンスだけは残してエンタメ性の質の高いカタルシスのあるミステリー・ノワールにした方が圧倒的に正解なんだよ。興味持った人は原作も読んでくれるし。
blacknessfall

blacknessfall