りっく

恐怖のメロディのりっくのレビュー・感想・評価

恐怖のメロディ(1971年製作の映画)
3.8
「愛は人を狂わせる」作品。
愛す/愛されることの面倒臭さを、ネチネチと執拗に描いている。
特筆すべきなのはいわゆる「ストーカー」役のジェシカ・ウォルター。
モンスター映画に登場する怪物よりも恐ろしく、それでいてきちんと人間性も保っている。
その迷いのないあっけらかんとした佇まいからは、悪気など微塵も感じない。
「愛する人を愛して何が悪いの」と言わんばかりの圧倒的な迫力に押し切られる。

イーストウッドの演出も的確。
特に終盤のイーストウッドの自画像を切り刻む場面と、車を飛ばして自宅に戻る場面が細かくクロスカッティングする一連の流れの異常なテンションは見事。
メイドや主人公に刃物を振りかざし続ける執拗さも生理的な嫌悪感を抱かせる。
残酷描写やスプラッター描写はないが、この「ネチネチ」が本作に異様な雰囲気を加えている。
りっく

りっく