半兵衛

M★A★S★H マッシュの半兵衛のレビュー・感想・評価

M★A★S★H マッシュ(1970年製作の映画)
4.0
戦争を戦地からではなく、彼らを治療する野戦病院の視点にすることで戦争行為の馬鹿らしさを嘲笑うというアルトマン監督ならでのシニカルさが効いた戦争映画。そしてアナーキーな登場人物たちが軍の厳粛な規則を引っ掻き回して権威をやりこめる様は痛快なようでいて、当時起きていてベトナム戦争を遠い異国の出来事にしか感じていないアメリカ人の意識に対する痛烈な批判も垣間見えてやっていることは面白いのに変な居心地の悪さがありあまり笑えないのもアルトマンらしい。

登場人物の一人に性の悩みを抱えている人間がおり、それをどうすることも出来ず自殺しようするエピソードがあり閉塞感のあるこの時代を象徴している。ただそんな人たちにニューシネマのように共感するというより、寄り添いつつも微笑ましく見つめているような作風なのが象徴的。

では面白くないのかというとそうではなくて、主人公たち医師たちがそれまでのばか騒ぎを捨てて真剣に重症の兵士を治療する行為を真剣に描くことで目の前にある戦いにどうすることも出来ずひたすら無関係なことでアホみたいに騒ぐことしかできない軍医たちの心情が切々と伝わり、やるせなさと開き直りに共感していつしか妙な楽しさを覚えていくことに。そんな体験の真の意味を問うために年に一回手持ちのソフトで鑑賞していることを考えるとやはり傑作なのかも。

戦地でのアメリカンフットボール大会、そしてそこからの主人公の顛末やキャストを紹介するナレーションといった人を食ったような結末が斜に構えたこの映画によく合っている。

キャスティングがいかにも70年代らしい顔ぶれが揃っていて個性が強めで、狂騒的な映画にぴったり。そしてイタズラで裸をさらされてしまうのに何とかして体をフィルムに映さないようにする奮闘ぶりにちょっと感動。

ちなみに瑳川哲朗、北村総一朗、西沢利明、富田耕生、田島令子などといった癖のある顔ぶれが揃った吹替えもみな適役で聞き応え充分、この作品特有のセリフをアドリブで次々と出していくスタイルを忠実に再現しているのも◎。
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