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ブローン・アウェイ/復讐の序曲のnoteのネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

公開当時、劇場で見て以来の再鑑賞。
派手な爆発とそれに伴う爆発の大音量に思わず耳を塞いだ思い出がある。
爆弾処理班と爆弾魔のスキルと英知を尽くした熾烈な戦い。
タイトル通り、凄まじい爆破シーンが見る者の度肝を抜くサスペンスアクションの佳作である。
また若き頃のアカデミー賞俳優共演の作品でもあり、彼らの迫真の演技も見どころ。
結構、お得な一本だ。

冒頭、北アイルランドの刑務所に服役中のIRA爆弾テロリスト、ライアン・ギャリティが壁を爆破して脱獄。
ギャリティ役は当時、「逃亡者」でアカデミー助演男優賞を獲ったばかりで油の乗り切ったトミー・リー・ジョーンズ。
深い皺にギラギラした眼、敵に回すと怖い。そんな雰囲気たっぷりだ。

ところ変わってアメリカのボストン。
MIT学生が元恋人に爆弾トラップを仕掛けて自殺する事件が発生。
市警爆弾処理班のエース、ジミー・ダヴが、間一髪で難解な爆弾の解除に成功。
ダヴは、恋人ケイトと連れ子との結婚生活のために、危険な処理班から教官職に転属する。
ダヴ役は「最も過小評価されている俳優」と評されていた、後のアカデミー主演男優賞俳優ジェフ・ブリッジス。
爆弾解除の真剣な表情と恋人に見せる子犬のような笑顔のギャップに既に確かな演技力が見える。

生意気なダヴの後任アントニー・フランクリン役はフォレスト・ウィティカー。
こちらも後のアカデミー主演男優賞俳優。
講義で生意気な口を聞いておいて、教官ダヴの仕掛けた地雷「跳ねっ返りのベティ」に引っかかるシーンは若造感たっぷりで初々しい。

脱獄後、アメリカに密入国したギャリティは、TVのニュースで爆弾処理の英雄ダヴを見て驚く。
ダヴは昔、IRAの同志だったが、本名のリアム・マクギヴニーを捨て、身分を偽っていたのだ。
昔ある事件でダヴが、関係のない市民の巻き添えを避けようと爆破をためらったのが原因で、ダヴの恋人でもあるギャリティの妹が死に、ギャリティは刑務所送りになった過去の因縁が明かされる。

そしてある夜、簡単そうな爆弾処理に向かったダヴの同僚が爆発で殉職。
爆弾には処理に来た人間を殺すための巧妙な細工が施してあった。
死んだ同僚の欠員を埋めるため、現場復帰するダヴ。
新たな爆破予告があり、臨場した処理班の同僚が、巧妙な仕掛けで二人爆死する。
人の賑わう白昼の市街地で処理班の救急車が爆発によって縦に回転して飛び上がる。
なかなか凝った危険な爆破シーンだ。
当然、CGではない本物の迫力がある。
爆弾に気づいたダヴがスローモーションで駆け寄る演出は緊迫感がある。
「逃げろー!」と必死の形相で近づいた途端にドカーン!だ。

そしてダヴにギャリティから更なる復讐を予告する録画が届く。
ダヴはケイトと娘を家から避難させるが、ギャリティはケイトやアントニーの近辺に現れ、ダヴへの復讐の機会を狙う、
ギャリティの魔手は、ダヴの伯父で警察OBのマックスに。
ギャリティをバーで見つけたマックスはダヴに電話で知らせるが、察知したギャリティに囚われる。
指定された場所に赴いたダヴの目の前には、身体にビッシリと爆弾を取り付けられたマックスが。

「自爆テロ」という言葉がまだ一般的ではない90年代に、爆弾を身体に巻いたマックスの姿は衝撃的だった。
ダヴに迷惑かけまいと自ら動いて仕掛けを作動させて自決するマックス。
目の前で伯父が爆死した無力感に苛まれ、酒に溺れるダヴをケイトがビンタで叱咤。
我に返ったダヴは爆弾の部品からギャリティの隠れ家を探しだす。
アジトの廃船を突き止めると、ギャリティは不敵に笑い、ケイトが出演するコンサート会場に爆弾を仕掛けたと告げる。

ダヴを巻き添えにするため、ギャリティは廃船を吹き飛ばす爆弾の仕掛けを作動させる。
自分が逃げるための時間稼ぎかもしれないが、船全体にピタゴラスイッチのような仕掛けが。
見た目は面白いのだが「そんなん、リモコンスイッチ一つでいいじゃん」とツッコミたくなる。
ギャリティのマニアックさが出ていると言えばそうかもしれないが、クライマックスで急にコミカルな味わいに。
ダヴとの格闘の末、廃船に取り残されたギャリティはOh My Godと両手を広げて爆死する。
この大爆発が本作の目玉。
桟橋をスタントマンが歩くすぐ後ろで次々に船体が吹っ飛んでいく。
(さすがに俳優の顔が見えるカットは合成だが)
爆破の破片や燃えカスが身体に当たるような危険なスタントだ。
画面いっぱいの炎と大音量。
海に飛び込んでなお、高々と火柱が上がる大怪我寸前のスタントは迫力満点だ。

コンサート会場に急いで駆け付けたダブは、祭典の花火やホールではなく、ケイトの車に爆弾が仕掛けられていると見抜く。
走る車にバイクで飛び移ったダヴが見つけたのは猿のオモチャを使った爆弾。
小馬鹿にした形が腹が立つが、ブレーキを踏むと爆発する侮れない仕掛け。
市街地を暴走した上、壁に激突寸前に猿をもぎ取ってダヴは解除に成功する。

ラストは、「お前の正体は黙っておくから、手柄は俺「寄越せ」と、アントニーの上から目線だが憎めない提案で、ダヴは過去を問われずに引退するハッピーエンドだ。

中盤までは復讐モノのシリアスなサスペンスで見応えがある。
爆破のプロvs解除のプロの戦いだ。
双方とも自分のスキルに誇りを持ち、生命賭けである。
しかし、ギャリティが知的な印象から、クライマックスでイカれたサイコパスになってしまうのが残念。
もっと緻密で冷徹な爆破テクニックで、強敵となって欲しかったものである。

仕掛けられた爆弾の内部の映像はユニークだが、バットマンの「ジョーカー」のような愉快犯ならば、最初からクレイジーな部分を全面に押し出して欲しかった。
トミー・リー・ジョーンズの怪演が良かっただけに急にキャラクターが方向転換するのは勿体ない。
ラストにコンサート会場大爆発か?と見せかけて爆発の規模が小さくなるのも、予算の都合なのか?勿体無い。

とはいえ、アカデミー賞受賞俳優共演の演技合戦に、「プレデター2」、「ジャッジメント・ナイト」で当時勢いのあったスティーヴン・ホプキンス監督のテンポ良い展開の演出に、危険なスタントの爆破シーンと良いところは多い。

加えて、電子音全盛の90年代にあって、アラン・シルヴェストリのフルオーケストラでサスペンスを煽る音楽も良いし、アイルランド人の話なので、アイルランドの英雄、U2の「With Or Without You」、「 I Still Haven't Found What I'm Looking For」といった大ヒット曲が珍しく映画に使われているのも嬉しい。

いまだ爆破モノの映画というと「ジャガーノート」かこの作品が頭に浮かぶ。
誰か本気でリメイクして、日頃のストレスが吹っ飛ぶほどの本物の大爆破を見せて欲しいものである。
もちろんCGではなく…だ。
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