回想シーンでご飯3杯いける

パプリカの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

パプリカ(2006年製作の映画)
3.6
今敏監督作品のレビューも、これで3作目。そしてこれが彼の遺作でもある。

前回レビューした「千年女優」でも感じたのだが、この監督はとにかく映画が大好きなのだ。冒頭に「ローマの休日」のパロディー・シーンが入る本作のテーマは「夢」。他人の夢を共有できる画期的テクノロジー「DCミニ」が何者かに盗まれ、それをきっかけに関係する研究員たちが奇怪な夢を見るようになる。画期的な研究と、それが現実世界を破壊する危険性をはらんでいる構図。その対比は、映画と現実、アニメと現実の比喩でもあるのだろう。

何といっても夢の世界を表現した映像が凄い。この直後にクリストファー・ノーランが作った「インセプション」にも通じる独創的な世界観。もしかすると「インセプション」の原点は本作なのかもしれないと感じるほどだ。

観ているこっちまで現実と夢の境界を見失いそうになるほどで、ストーリー的な部分をしっかり追えていたのか自信が無いのだが、それは逆に本作が成功している証拠でもあるのだろう。

DCミニの開発者、時田の声優を務めるのは、アムロ役で有名な古谷徹である。悪意なく現実世界を破壊する機械を作り出してしまう、その少年のような話しぶりに、何とも言えない恐怖を感じる。