3104

裸のキッスの3104のレビュー・感想・評価

裸のキッス(1964年製作の映画)
3.7
殴る。殴る。
女が男をとにかく殴る。怒りに任せて。
ウィッグが取れて坊主頭が露わになってもかまわず殴る。
ひとしきり事が済んだのち鏡でウィッグと化粧を直し、そこにかぶさる「THE NAKED KISS」のタイトル。
性急かつパワフルなここまでのくだりの「B級感」~予算や構成というよりも魂的な意味~でとにかくは満足だ。

約2年後。
殴っていた女・ケリーは売春婦(殴られていたのは金を不当搾取していた“元締め”)という過去に別れを告げんと、新しい土地で生活していた。坊主頭からすっかり毛も伸びている。
過去の闇から抜け出し光が注ぐ未来を送れるかに思えたが、物語はそんな「救い」を用意しちゃいない。様々な事柄が彼女を再び闇へ引きずり込もうとする。しまいに露わになる歪んだ事実、そして殺人・・。

囚われた彼女がかつて坊主頭になった理由と、タイトルにもある「裸のキッス」の意味を告白するシーンが後半の大きな“引力”になっている。そして告白(≒懺悔)ののちに与えられる「救い」を経て、現実的で浅ましい町の人達の視線に送られ物語は幕を閉じる。最後のくだりはまるで西部劇のようだ。苦くそして清々しい。

冒頭近くに映る映画館で上映されている作品名が『Shock Corridor(彼の前作「ショック集団」』という、ちょっとしたお遊びもあり。
3104

3104