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トーク・トゥ・ハーのpanpieのレビュー・感想・評価

トーク・トゥ・ハー(2002年製作の映画)
4.2
何これ!
観終わった時の私の第一声である。
「私の生きる肌」で強烈な個性で私を魅了したアルモドバル監督作品。
フォローしているYukiさんから「私の生きる肌」でコメントをいただきオススメいただいた今作。
驚愕度合いは「私の生きる肌」には勝てなかったもののこちらもなかなかでした。(^^;;


スクリーン中で幕が上がる。
相変わらずゴージャス!
演劇が上演されている。
それを観ている男2人。
1人は感動の涙を流しそれに気付いた隣の男は涙している男を見て驚く。
泣いていた男はマルコ。
それを見て驚いた男はベニグノ。
今作の主要登場人物だ。

ベニグノが寝たきりの美しい女性にマッサージをしながら演劇の内容や泣いていた男の話を話して聞かせている。
でも女は目をつぶったまま微動だにしない。
男の服装からして介護士?
じゃあ女性は介護されている?

やはり彼女は昏睡状態だった。
他の女性介護士と共に鮮やかに体をベッドの上で洗い拭いていく。
そして昏睡状態の若い女性の体がもう完璧な美しさで同性ながら見惚れる程!
その若い女性はアリシア。
後に出てくるが彼女はバレエとサイレント映画と旅行をこよなく愛していた。

場面変わって闘牛のシーン。
女性闘牛士が剣を突き立てられた血まみれの牛に赤い布を振って煽る。
闘牛はスペインの国技だ。
演劇の場面で涙していたマルコは美しい女闘牛士に取材を申し込む。
どうやらマルコは物書きの様だ。
女闘牛士はリディアと言い最近スキャンダルをテレビで取り上げられその事は公には話したくなくメディアから逃げている。
マルコが取材をして彼女の事を書きたいと申し出るも断られ家へ送る事に。
リディアを送って車を発進させると悲鳴が聞こえリディアが一目散に走ってくる。
キッチンに蛇がいたと言うのだ。
あんなに勇猛に牛と戦っているリディアとは別の顔を見せられこの一件で傷心のリディアはマルコに惹かれて行き2人は距離を縮めて行く。
リディアは戦いの前にマルコに「試合の後であなたに話がある」と意味深な言葉を残して試合中に牛に突かれ昏睡状態となってしまう。

そんなリディアに触れられず話しかける事も出来ないマルコに対してベニグノはアリシアを献身的に介護しまるでその一方的な会話を楽しむ様にいつも話しかける。
二人の女と二人の男の対比が絶妙で面白い。
少しずつ主要4人に絡んで増えて行く登場人物たち。

時系列はややぐちゃぐちゃなもののちゃんと「〜年前」などタイトルで表示されるので頭の中は整理しやすい。
タイトルの出方や部屋の中など映像が相変わらず色使いも美しい。

ここまでマルコの方に重点をを置いてストーリーは展開されてきたが中盤からのベニグノのストーリーは今作のの真骨頂だ。
なんと言うストーリー!
「アリシアとベニグノ」の章からは恐ろしく驚愕だ。
ここまでとても献身的で素晴らしい介護士だったベニグノの正体が次第に明らかになって行く。
アリシアの交通事故までベニグノが装ったのではないかと勘ぐる程だ。
ベニグノの生い立ちや考え、視点に至るまで全てが気持ち悪い。
アリシアの美しさを思うと奇行に走ったベニグノの気持ちもちょっと分からなくはないのだが事故後の出会い?も仕組んだのではないかと思わせるに十分な変態で気持ち悪いストーカーに過ぎない。
思春期に普通の恋愛経験なしに母親の介護をしていた辺りからもう狂気は始まっていたのかもしれない。
変態を撮らせたらピカイチなアルモドバル監督の真髄をまた観た気がした。

ベニグノが観たサイレント映画「縮み行く恋人」もなかなか変態映画だった。笑

とてもエロいのに性描写が一切ない。
やや黄味がかった液体と赤い油の様な液体が分離したりまた融合したりする映像は恐らくその行為を象徴するものであって美しくも胸糞悪いシーンを観る者に想像させ嫌悪感を抱かせるが映像はとても美しい。

昏睡状態のアリシアと話が合う、結婚したいと言ってのけるベニグノにマルコが死人も同然なんだ!頭に叩き込め!と説教するも時既に遅し。

ラストは…
まさかの2人の意外な出会いを描いている。

バレエ教師のカタリナとマルコが話すシーンでマルコが「話す事は意外に簡単だ」と言うが劇中でリディアに話しかけられなかったマルコはそれを乗り越えたと言う事なのか?
これからはアリシアに話しかけるよという意味?

ベニグノ役のハビエル・カマラは「バッドエデュケーション」でも登場しどう観ても男にしか見えないゲイの役で出ていた。
そっちを先に観た為次にこちらで発見した時に「あ!あいつだ!」と思わず声が出た。笑

あとマルコの元恋人役で「私の生きる肌」のエレナ・アヤナが出ていた。
まだ若く可愛らしい!
キャスティングに名前がない!
何故?
この10年近く後にあの恐るべし変態映画に主演するなど彼女は想像していたのかな?笑

途中宣教師が尼僧を犯すと言う会話が挟まれていて尼僧だけでなく幼児性愛者もいると言う件は次作の「バッドエデュケーション」への予告と言える。

リディアが服が欲しいから買いに行くと言い〝シビラ〟が出てきた時は驚いた。
スペインのショップだったなんて!
その昔に鮮やかな色使いに一時期憧れて今ではもう服は捨ててしまったが傘はまだ愛用中だ。
今はもう忘れかけていただけに懐かしさで一杯になった。
蛇が出た時に着ていた衣装はシビラのものだと思う。


今作にもやられました。
監督の頭の中が見たい。笑
レンタルが開始された「ジュリエッタ」もとても楽しみにしている。
でも変態映画をレビューする為に3度続けて鑑賞して疲れたのでもうちょっと時間を置いて心を一度クリーンな状態に戻してから観ようと思う。
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