こたつむり

母なる証明のこたつむりのレビュー・感想・評価

母なる証明(2009年製作の映画)
3.9
♪ どうか踊りましょう 熱いダンスを
  全て呪うような愛の鼓動で

ポン・ジュノ監督流の土曜ワイド劇場。
息子の冤罪を晴らすために母親が奮闘する物語。

…なんて思っていたら想定外の一撃。
相も変わらず、韓国映画って激烈ですねえ…。
「観客を殴らないと気が済まないのではないか」と思うほどに、ガツンと襲ってくるのです。あー。痛い。ぐへえ。

それに“他人事”とは思えない情景なのです。
何しろ、日本に似ていますからね。これがハリウッド産ならば“フィクション”だと割り切れるのですが…。まあ、歴史を考えれば当然なのですけれど。

しかも、その中に貧困も見えるわけで。
寝床が薄っぺらい布団だとか。冷たさを感じるモルタルの壁だとか。未舗装の裏路地だとか(泥で足跡が残るほど)。その“昭和っぽさ”が物語を引き立てるのです。

でも、それって日本人の立場で観た場合。
韓国の人たちはどんな感情が喚起されるのでしょうかね。憐憫なのか、同情なのか、それとも侮蔑なのか。誰もが同じではないと思いますが、大多数の意見を知りたいものです。

まあ、そんなわけで。
連綿と繋がる負の衝動を描いた物語。
中盤までは凡庸な筆致なので期待値は下げたほうが良いと思いますが、それでも時間を忘れさせるほどの巧みさは見事でした(今回は自国への批判は控えめ)。

あと、本作に限って言えば、邦題も素晴らしく。鑑賞後に“もうひとつの意味”が浮かび上がってきますからね。確かに“口紅の場面”は少し違和感があったのですが…なるほど。それが“咎を忘れるかのような狂騒”に繋がるのですね…。胸が抉られるなあ…。

やはり、韓国映画って劇薬。
まとめて観るのは精神的にヤヴァイかもしれません。 

最後に余談として軽い話題。
主人公の《息子》を演じたウォンビンに対して「ジャニーズっぽいなあ」と思ったのですが、後から調べてみると「韓流四天王」と呼ばれていたとか。この魅力で“お姉さま方”を篭絡したのですね。納得です。
こたつむり

こたつむり