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遊星からの物体Xのblacknessfallのレビュー・感想・評価

遊星からの物体X(1982年製作の映画)
3.8
『遊星からの物体X』、もう何回目か分からないけどやってれば観ちゃうよな。そういう自分の性質を考えると、自分が映画に求めてるものはおもしろいビジュアルであり即物的なショックバリューなんだってことだと思う。社会や人間存在の考察みたいなものより。
勿論、社会や人に鋭くフォーカスした映画好きだし、そういう作風の監督にリスペクトの念はあるけど、偶然、見れるからってダルデンヌ兄弟の映画とか観る気は起きない。掻き乱されて重い気持ちにさせられるから覚悟がいるんだよ。

この映画は『ハロウィン』の次にカーペンターの知名度上げた作品であるけど、それ以上に特殊効果のロブ・ボッティンの名を知らしめた映画だと思う。
それぐらい特殊効果が見事でインパクトが強い。
犬の頭が裂けてグシャーと触手が出てきたり、隊員の腹が開いて鋭利の歯がAED処置をする医者の腕を食いちぎったり、楽しいグロゴア描写がいっぱいで知っていても楽しめる笑 むしろ「来るぞ来るぞ😍」て感じで知ってるからこそワクワクする笑

ボッティンの特殊効果は同じ設定とストーリーの『エイリアン』と比較すると『エイリアン』のようなグロテスクでありながら神聖を感じるアート性の高さや格調はないけど、見世物的なバットテイストとファニーさがある。どっちも素晴らしいけど圧倒的に『遊星からの物体X』の方が楽しい笑

ボッティンの映画とは言ったけど、しっかりカーペンターらしさもある。
主人公のカート・ラッセルの異様な無口さ、そして信じられないぐらい恐ろしい超常現象を目にしても一切狼狽えを面に出すことなく、黙々と最善の手を打って事態を打開しようとする。
『鬼滅の刃』のアイツみたいに心情の独白や何を考え行動してるかのまったく説明しないから感情移入しづらく非人間的で不気味にも見えるんだけど、誰が未知の生命体に乗っ取られていていつ攻撃してくるのか分からない超非常事態に対峙できるのはこれぐらいタフな精神の男じゃないと無理なんだとも思える。
これに限らずカーペンター映画の主人公は寡黙な行動派が多い。同じくカート・ラッセルの『ニューヨーク1997』のスネーク、『ゼイリブ』のロディ・パイパーも宇宙人に社会が乗っ取られいることに気づいても激しく動揺したりしない。
カーペンター映画に骨太でクールな印象なを受けるのは主人公の性格設定にあるのかも知れない。
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