ナガノヤスユ記

沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇のナガノヤスユ記のネタバレレビュー・内容・結末

4.6

このレビューはネタバレを含みます

ブルジョワ一家の厚顔と軽薄も、プロレタリアートが抱えこむ不義と衝動も、どちらも人間の狂気かもしれない。しかし、セックスを貪りあうばかりのブルジョワジーに対して、貧しい女2人をつなぐささやかな触れ合いの儀式の方が、控えめにいっても、たしかに美しい。終始不気味な破綻の予兆が支配する物語において、あの瞬間にだけ最小の倫理がある。もちろん二人の関係は、安易なカタルシスを与えてくれるでもなく、「善行」の主たる神父の運転する車に突撃され、ジャンヌがフレームアウトする、あのあまりにも空虚なカットで、永遠に失われてしまう。有限の時間だけが約束してくれる正しさがある。