クロ

男はつらいよ 寅次郎忘れな草のクロのレビュー・感想・評価

4.5
夜の車窓にゆれる街の灯のあいまあいまにぼうと浮かんで消えるのは間の抜けた死人のような自分の顔だ。今居る場所も今夜の宿も成り行き次第。耳慣れない言葉を交わす人々にまぎれて明日は仮の根を下ろそうか。あてどない長旅は心を苛む。

寅さん、巡業歌手のリリーさんと網走で出会う。舟出を見送る寄る辺ない二人は淀みで寄り添う浮き草のようだ。

とらやの面々に迎えられたリリーさんは本当に楽しそうだった。寅さんとの掛け合いからも、大切な人として通じあっていることが伺える。それでも寅さんの元を去ったのは何故なのか?彼らと共に生きることもできたのではないか?最後で意地を張った寅さんが愚かなのか?

薄暗いアパートの彼女が捨てていった部屋は見てはいけないもののような気がして、ただただたまらなく悲しかった。
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