ソクーロフの卒制だけど、なんというか、天才の所業という感じ。
革命直後の不安定なソ連で、結婚生活に満足できずに死ぬことを試そうとする元赤軍兵士の若者。
という内容なのだろうが、語り口はかなり抽象的で、「日陽はしづかに発酵し...」に近い印象。場面転換とかも夢現な感じで、いつの時代のどこの噺なのか、ハッキリしない。
しかし、モノクロに近い薄暗い画面と琥珀色の画面の異様な迫力には、目を見張るものがある。川に身投げして流れ着くのが街の屠殺業者の人達だったり、突然現れて主人公に寄り添う坊さんだったりと、死と生の狭間を彷徨う人々の営みがさりげなく登場するのも面白い。
というか、確かに前半の屋内場面の方が画面の力は凄まじいけど、主人公が家出してからガラリと面白くなった。
正直、こんな作品を非公開にしてしまう70年代ソ連の検閲は器が小さすぎるし、余裕がなさすぎると思った。