Qちゃん

ブラック・ダリアのQちゃんのレビュー・感想・評価

ブラック・ダリア(2006年製作の映画)
3.1
05年の8月に映画館で予告編観て、あまりの異様な怖さに硬直。それからずっと観たかった作品だった。

実際にアメリカであった未解決殺人事件であるブラック・ダリア事件を題材にした、クライム・ムービー。「ブラック・ダリア」の名で知られる女優志望の女性エリザベス・ショートが、無残に殺害される。その事件を追う二人組の刑事は、やがて死んだ彼女に魅入られるかのごとく、真相究明にのめり込んでいく、というあらすじ。

初めのボクシングの件が緩慢だが、その後の本編では、予告編で感じた、一種倒錯的な静かな異様さが中々怖く、印象に残った。間違いなく一番の功労者は、「ブラック・ダリア」の役を演じているミア・カーシュナーだ。残されていた彼女のスクリーン・テストの映像など、白黒の短いシーンが幾つかあるだけなのに、ファム・ファタールとしての「ブラック・ダリア」の存在感がすごい。今どきファム・ファタールだなんて、どんな女性に言えるんだと一笑に付せるような題材なのに、その映像の彼女を見ると、なぜ刑事二人がそれほどまでに彼女に入れ込めるのかが、女の私にも何となく分かる。

おっとりした地味な美人で、あどけない。役者など到底出来ない大根の女優、どこか頭のネジも少し飛んでるんじゃないかと思わせる。そこはかとなく頼りなげ、だが、女優になりたい純粋で一途な想いがあって、無邪気に諦めない。ふとした時に、彼女の譲れない決意と強い精神が垣間見える。その時に、彼女に惚れこむ。そんな感じが、ひしひしと伝わってくる。「ブラック・ダリア」のミアと、彼女にガッツリ入れ込む片方の刑事を演じるアーロン・エッカート、かなり良かったと思う。

逆に、肝心の主役の二人ジョシュ・ハートネットとスカーレット・ヨハンセンの存在感の無さが顕著。頑張ってるんだけど、ほぼ無表情な上に説得力も無ければ切迫感も無い。せっかく話の筋は面白い感じだったのに、主人公らがそれぞれの役の重みに追いついてなくて、何だか上滑りしちゃってる感が否めない。準主役のヒラリー・スワンクも然り。脇役も含め、この映画、知ってる人には結構な豪華キャストなんだが、もうちょっと慎重に適役の人を当ててほしかったかな…。
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