回想シーンでご飯3杯いける

A.I.の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

A.I.(2001年製作の映画)
4.5
スティーヴン・スピルバーグによる創作の核にあるテーマは「コミュニケーション」なのだと、これまでにも何度か書いてきた。特に地球外生命体との接触を描いた「未知との遭遇」と「E.T.」、馬と少年の繋がりを描いた「戦火の馬」は、言葉によるコミュニケーションが困難な繋がりを描いており、そうした題材を描く背景には、スピルバーグ自身が発達障害を持っていた事が関係しているのではないかと感じる。

本作「A.I.」に登場する子供ロボット、デイビッドは、引き取り先の家族を愛するようにプログラムされていたが、言葉は杓子定規で感情の機微は伝えられず、自分の言葉が相手にどんな印象を与えるか、コミュニケーション上の距離感を上手くつかめない。それはスピルバーグが子供時代に診断されたアスペルガー症候群の典型でもあり、何処まで自覚的であったか定かではないが、彼ならではの衝動やメッセージ性を強く感じさせる脚本なっている。

そして、ここで描かれるコミュニケーションの図式は決して発達障害を持つ人固有の問題ではなく、人間であれば広く共有できる葛藤でもあるのだと思う。終盤には数千年後の地球が描かれているが、正に人類全体を俯瞰したような壮大な世界観から、人間とは?、コミュニケーションとは?、というスピルバーグの問いかけが聞こえてきそうだ。

捨てられたロボットの解体ショーや、女性にセックスの奉仕をするロボット等、ユーモアのひと言では片づけられない過激なシーンも多いが、ピノキオの話を盛り込む等、寓話的な要素を巧みに取り入れて物語として完成させる手法は本当にお見事である。スピルバーグ入魂の一作と言って良いだろう。