橋素電

ロッキー・ホラー・ショーの橋素電のレビュー・感想・評価

ロッキー・ホラー・ショー(1975年製作の映画)
4.5
公開当時は酷評されたが、何十年もかけて熱狂的なフォロワーを着実に増やし「キング・オブ・カルト」と呼ばれるまでになった伝説の作品

レンタルもされている「特別編」には特典として「上映中の観客の声」が 収録されてますが これをONにして本編を観るとこれがうるさいことうるさいこと

スーザン・サランドンが出てくると「Slut!(〇リマン!)」バリー・ボストウィックには「Asshole!(ケツの穴野郎!)」と罵声が飛び交い、ミュージカルシーンでは一緒に歌うのはもちろん アイドルのライブかっていうくらいバッチリのタイミングでコールが入ってます

この作品は、一言で言えば「解放」の映画です

登場人物はみな奇抜で、奇妙で、ぶっ飛んでいます 平凡な夫婦に見える主人公の男女も ストーリーの進行と共に常識の皮に包まれていたエキセントリックな内面をさらけ出して踊り歌います

彼らの力強い歌声とダンスは「細かいことは気にすんな!俺もお前もみんな変わり者だ!変わり者っていう点でみんな同じだ!それでいいんだ!」という生と性の全面肯定に満ちています

愛のために生きて、愛のために死ぬことを少しも戸惑うことなく選べる美しさ、そのエネルギーに共鳴した観客が登場人物と同じように心を解放し、感じるまま叫び歌うという体験を経てカルトムービーになっていったんですね

最後に音楽的なことをひとつ
近年のミュージカル映画の劇中歌はとにかく高音で、とにかく声量を張り上げて、歌い上げまくって「この曲歌えるもんなら歌ってみろ!」みたいな曲が多いんですが

この映画の劇中歌はみな歌いやすいトーンで、合唱して楽しみやすいことが結果的に多くの人に長く愛される理由のひとつになったのだと思います
歌は誰のためにあるのか 現代のショウビズ界はもう一回考えてみた方が良いのかも知れませんね
橋素電

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