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WANDA/ワンダのkyokoのレビュー・感想・評価

WANDA/ワンダ(1970年製作の映画)
4.0
荒れ放題の家と赤子の泣き声にまるで反応出来ずにひたすら惰眠を貪る女。すぐに思い浮かべたのはライカートの『リバー・オブ・グラス』なのだけど、ここじゃないどこかに行きたかった夢想どころか、常に思考停止状態、オツムの弱さが見ていて痛々しいのはこちらに軍配が上がる。カーラーつけて法廷に登場は地味に衝撃を受けた。

「夫に見限られる」「ゆきずりの男にヤリ捨てられる」と続いて「強盗と一緒に逃避行」と、ワンダの双六にはロクなマスがない。何の目が出たところで詰むと思われた人生はYou can do itとI can'tの応酬の先で手に入れたYou did itというパワーワードによって変化をもたらしたのかもしれないが、それはそれでなんだか切ない。

ただただ流されるまま行き着いた場所は天国か、はたまた地獄か。本人の途方に暮れた顔に未来は容易に見出せず、それまで無音だった背後に初めて陽気な音楽が鳴り響いていたのが印象的。
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