てっちゃん

WANDA/ワンダのてっちゃんのレビュー・感想・評価

WANDA/ワンダ(1970年製作の映画)
4.4
3劇場をはしごするという映画好きには堪らない休日。
それぞれの劇場で1作品ずつ観るという完璧なスケジュール、堪りませんね。

「私は綺麗な画面が嫌いです。完璧すぎて感情移入できない。見た目だけじゃありません。リズムや編集、音楽一全てについて。技術的に綺麗にできていればできているほど、内容も綺麗なだけになり、全部が上辺だけになってしまう。登場人物も含めて。」

これは、本作が初監督作品であり最後の作品となってしまった監督バーバラローデンさんの言葉。

この言葉にぐっと来たのなら、間違いなく本作を観るべし!と胸を張っておすすめできるし、シャンタルアケルマン監督さんの大傑作「ブリュッセル1080~ジャンヌ・アケルマン」と併せて観ることもおすすめしたい(これ本作パンフでも書かれていて、私も映画を少しずつ知ってきたなと嬉しくなった次第でした)。

本作は、私の大好きなイザベルユペールさんが本作の配給権を買いとり、マーティンスコセッシ監督さんらが設立したフィルム修復会社とアパレルブランドのグッチにより、奇跡的に蘇った奇跡の作品。

本作は、女性の解放を描いているのではない。
女性の社会からの抑圧、窮屈さを描いている。
主人公のワンダは、"敢えて"流される女性として描かれている。
その"敢えて"というのは、本作を観て頂ければ分かるかと思う。

"敢えて"、何も持たない、何も考えない、流されるがまま、それに"気付こうとしない"。
でもそんな"敢えて"のワンダは、作中で唯一、反抗するところがある。
それは"妊婦のふりをしろ"と命令されたのを拒否するところ。

これは何を意味するのか。
ただの気まぐれで拒否したのか?
冒頭でワンダは家族をあっさりと手放すことから、家族に対しての拒否感があったのか?
過去を捨てたことからの後悔が上回ったのか?
それらは分からないけど、そこのシーンがすごく印象的に残った。

本作は、映画的な盛り上がりがほとんどない。
物語的にはめちゃ盛り上がっても良いような内容が用意されているんだけど、それを"敢えて"しない。
ただ起伏もなく、物語は進行していくのだけど、全く目が離せない不思議な力がある。

それはどうしてなんだろうか?と考えてみたところ、本作は全く無駄なところがないからだ。
無駄というか、最低限の出来事と最低限の登場人物と最低限の繋がりで作られている。
だから私は作品に集中できて、ぐいぐいと引き込まれていったんだろう。

最後の印象的なカット。
ワンダは取り残されたまま終わるのか、また1人になってしまったのか、また"敢えて"の行動をしていくのか。

私はワンダが幸せになって欲しいと思った。
しかし、この世の中でワンダは幸せになれるのか。
幸せとはなんなのか、希望である。
ワンダは希望を持っていって欲しいと思った。

本作のパンフはものすごく丁寧に作られていて、作品をより知ることができるし、作品への愛を感じるので、とてもおすすめです。

大満足したまま、次の劇場へと向かいます。
てっちゃん

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