てっちゃん

怪物のてっちゃんのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
3.9
お初是枝監督さん作品です。
お初!なので劇場へと思ったけども、けども、、行けないのが世の情け。
しかし!配信という便利なものが世の中にはあるのですね、ということで平日夜に鑑賞開始です。

是枝さんの他作品がどのような作風なのかが分からないのでなんとも言えないが、とても観やすい作品ですね。
しかしながらメタファー要素があったり、昨今の社会問題を取り込みつつも、"人間を描く"ということに主点を置いているように感じました。

本作は是枝さんが脚本ではないということで、一概にそうだとは言えないですが、視聴者側に考えさせる余地を残した作品を描くのと印象的でした。

これを先に書かねばと思っていたことがありました!
前から評判は聞いておりましたが、子役を使うのが上手いということ!
自然な演技であるのを重んじて撮っているのが伝わるし、そこにいる人物として描こうとしているのが伝わります。
やらされている感がない感じ。
そこがいいですよね。

さて本作ですが、複数の人物目線から同一のことを描いていく作品になっておりますね。
しかも脚本が凝りに凝っているので、ここのシーンはこんな意味合いが?いやいやこんな意味だったのか?もしやこういうことだったの?みたいな感じで、見え方を変えていきます。

"複雑なんだよ人間って"ことを思いました。
本作では登場人物誰もが、複雑なんです。
それは当たり前ですよね。
でも最近思うことがあるのです。
背景事情、人情、思慮しない人が多いなと思うのです(私もそのひとり)。

というのも、強いことばで批判し評価し、あわよくば人から賛同を受ける図式が本当にどうかしてると思うのです。
その向こう側にいる人を想像できない。
なぜその経緯に至ったのかを想像できない。
所謂”論破”はその最たるものですよね。
ただただ想像力が乏しいとしか言いようがありません。

本作では、想像力が乏しい人たちが出てきます。
少なくとも私には、その想像力が足りていませんでした。
移りゆく登場人物に対して、共感し敵意を持ちました。
なので鑑賞後にふつふつとわき起こる、”なぜ?”を考えることができました。

初是枝監督さん作品。
映画としての楽しみもありつつ、社会問題を入れつつも、根幹にあるのは”人間”であり、それも身近な存在ですら自分の知らないことが沢山あるのだよと気づかされる作品でした。

最後に坂本龍一さんの音楽、非常に素晴らしかったです。
てっちゃん

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