てっちゃん

ボーはおそれているのてっちゃんのレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.2
きましたね、アリ・アスター監督さん!
絶対に観てやるぞ!と思っていたので、公開2日目くらいで劇場へ向かいました。

過去の作品でいきなり大監督の仲間入りしたので、さぞかし混んでいるのかなと思いましたが、予想より混んではおらず、、本国では大コケしているようで(それでも次作でもがっつりとサポートするA24は信頼できますねと思っておりますし、それだけの体力があるA24ということなのですね)、日本での宣伝がどのような感じなのかは知らないけど、少し寂しいです。
ま、そもそも超絶エンタメ作品を撮るような監督ではないですからね。

さあさ3時間!(長い!!お手洗いが心配になるから勘弁して欲しい)の地獄旅が始まります。

アリ・アスターさん作品は、考察というか謎解きというかパズル的な要素が多く、それを解いていく作品のイメージが強いですよね。

もちろん本作ではその要素が過分にあり、そのあたりはさまざまな考察を見ればいいと思いますが(さすがに本作パンフはやりすぎ感というか、パンフは作品を別角度を見られるようにする"補助線"みたいな役割が望ましいのだと思うのです。本作パンフでは断定するような書き方だったり、観客の想像力を損なうような書き方が目立つのが気になりました)、これだけはおすすめしたいものがあります。

町山智浩さんの解説動画ですね。
まさに映画評論家ならではの動画内容であり、本作の根本的な部分である、"なぜアリ・アスターはこのような作品を作ったのか?"について言及しております。

様々なところで言われておりますが、本作はユダヤ教、ユダヤ人であるところがキーになっております。
そのあたりを掘り下げていき、さらに元ネタとなった映画も紹介してくれています。
これを観ると、本作についてさらに興味を持つだろうし、こういう見え方ができる作品だったのか!と気づかせてくれます。

町山さんの印象的な言葉がありました(そのままじゃないです、劣悪な記憶力なので)。

"料理食べてこの料理は、これこれが入っててこの要素がありますねとか言うでしょ?映画評論家もそうでないといけないと思うんです"

申し訳ないが、本作パンフでは、とてもプロとは思えないライターの方の(もしかしてと思って名前を確認すると、あれ?この間も悪い意味ですごかった文章だった人だなと思い、久しぶりの再会でした)コラムのようなものがあるが、この町山さんの言葉の意味を噛み砕いて飲み込んで欲しいと思う。
かなりきている文章だなと思った内容でした。

さあさ本作ですが、地獄めぐりの3時間でございました。
アリ・アスターさんの頭の中はどうなっているのでしょうかね。
本作は4章に分かれているような構造です。
ここでは各章で私の思ったこと、感じたことを書いていきます。

○1章
不条理コメディと聞いていましたが、なるほどそういうことか!って感じでした。
ボーはあらゆることが誇張して見える感じ取る人間なので、こうなったら嫌だな、私が悪かったんですみませんすみません、が繰り広げられます。
カオスが渋滞しているボーの住む街。
これだけで、ありがとうございますと思いました。

○2章
これはなんかあるぞ?と意識しながら観ていくと、、って感じの章ですね。
特に強烈なのは娘でしょう。
薬でぶっとんでキレッキレの彼女にボーは恐れ、たじたじになります。
とある謎を与えて、1章と同様に唐突に終わります。

○3章
劇場で観たかった"オオカミの家"の制作した方たちが関わっています。
おそらくこの章が眠りを誘うのでしょうが、珍しく興奮しっぱなしだったので眠ることなく、惚れ惚れしながら観ておりました。
やっぱりやるよねって思ったシーンからのかわいらしい?終わり方でした。

○4章
謎解きの章ですね。
そして屋根裏にいるとある"モノ"。
この章が1番笑ったかもしれません。
特に笑ったのは、音楽をリピートするところ。
ここでするんかい!とたまらんかったですね。

けっきょくのところ、なんてものを3時間みせられてたんだ!って感じで終わるのですが、それでも”今”のアリ・アスターさんだからこそ撮れた作品であることは間違いないことで、永遠と悪夢、地獄を見せられる作品でありますし、彼の底なしの才能を確認できることは間違いないでしょう。

もしかしたら、今後はこのような作品は撮りづらくなるかもしれません。
そのような意味でも本作は”今”を感じさせてくれると思いました。

彼がこれからどのような作品を撮っていくのかとても楽しみですが、本作がある種の変異点ということになっていくでしょう。
彼自身が体験した恐怖(特に家族観)を映画内でどのように描いていくのか、もしくは更なる変化を求めていくのか。
今後とも注目していきたい存在だと、改めて思いました。
てっちゃん

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