188本目は、某ラジオ番組の映画批評コーナーでも話題だった、こちらの作品を。
原作は未読、ドラマも観ていなかった自分がどう思うのかや、某ラジオ番組で酷い酷いと言われていたこの作品が、果たしてどこまで酷いというのかを見極める意味も含めて、借りてみました。
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…いやぁ、キツかったです。
正直なところキツさでいうと「デビルマン」や「ママレードボーイ」を優に超えていました。例えるなら、こっちはチーズトーストのモーニングが食べたいだけなのに、頼みもしないのにⅬサイズの全部乗せピザと一緒に、ホールのデコレーションケーキとクリームソーダを大ジョッキで出されたような感じでしょうか。
とにかくすべての要素がくどい、しつこい、暑苦しいのです。特に劇伴と効果音のくどさは想像を絶する苦痛でした。
感動をさせたいシーンに必ずかかる「♪ジャーラーラーラーーラーーー」が何度も何度もかかるのをはじめ、不穏な時には「ポーン」みたいな音が入ったり怪しげな音楽がかかったりで、とにかく場面場面で劇伴が音で盛り上げようとばかりに鳴らされていて、げんなりとしてしまいました。そんなに要らないから!無くても役者さんの演技だけで伝わるから!
もちろん、至る所でスローモーションをバンバン多用していきますし、川藤先生をはじめとして、基本的にオーバーアクションかつ怒鳴る感じで喋る人が常に画面内にいるので、観ていて本当にしんどかったです。
ストーリーも酷いです。
要約すると「新入生が入ってきたよ!」「甲子園の予選だよ!」「卒業式だよ!」っていうことだけなんですけど、それだけで137分も使っているんですね。似たような題材で例えば「チア☆ダン」は121分で三年間+αを描いている訳ですから、お話そのものが如何に薄いかがよくわかると思います。
それに、二子学ナイン一人一人の話は、テレビドラマで既にやっているので、それ以上のものは描けない構造になっていますし、かといって新入生の二人が大きくクローズアップされるのかというと、そこまででもないんですよね。じゃあ、何に時間が使われるのかと言うと、甲子園の予選試合と卒業式に使われるんですけど、特に決勝戦となる笹崎高校戦の展開が酷すぎて唖然としてしまいました。
二子学のメンバーは自軍の攻撃中はみんなベンチで怒鳴っているだけだし、スリーアウトで攻守が入れ替わってもグダグダ要らないやり取りをしてどんどん話を引き延ばすし、相手校の様子はほとんど写さないうえに、限りなく淡白な描写で終わらせてしまっているしで、徹底的に「内輪」だけの物語で完結させるつくりになっているのです。
そして繰り返される「夢」「夢」「夢」…
「夢」を持つことの素晴らしさをこれでもかというほど詰め込んで、その実「どうやってそれを叶えるのか」「それでもダメだった時はどうするのか」という具体的なところは「それでも頑張る」というだけで理屈をほとんど描かないというのは本当に欺瞞だなと思いました。そこを描くとぐっと深みが増すのに…
最後の方なんか、卒業式のくだりで一人一人に川藤先生が声をかけるんですけど、ピザにチーズマシマシ、ケーキにホイップクリームマシマシ、クリームソーダにはアイスマシマシもう一杯!くらいな勢いで過剰な演出を加えていくので、流石に正視に堪えられなかったです。
ここまで過剰に演出を全部乗せしようとしてくる作品って、ある意味珍しいのではないでしょうか。
ビッグバジェット映画なので、映画としての体裁は整っているとは思いますが、精神的なしんどさはこのツアー随一だと言えると思います。
ある意味貴重です。ぜひぜひ☻