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ぼくセザール 10歳半 1m39cmのemilyのレビュー・感想・評価

ぼくセザール 10歳半 1m39cm(2003年製作の映画)
3.8
10歳半、身長は1m39cm。甘い物が大好きでちょっぴり太めのセザール・プチ。学校のこと、習い事、パパが出張?!大好きなサラのこと、親友のモーガンと過ごす日々、ついにはモーガンのパパさがしのためロンドンへ!初めての海外旅行、パスポートもないけど?!子供達の目線によりそった日々の冒険がユニークに描かれる。
 
 冒頭のシーンが好きだ。冒頭は葬式から始まる。セザールのナレーションで彼の心情が語られる。大人たちは悲しんでるけど、子供には退屈。そこからカメラは引いていき大きく捉え、雨の中黒い傘がどんどん広げられていく。それを上からカメラは捉えるが、黒い傘の集合体の中に一つピンクの傘があるのだ。まさしく子供と大人の違いってそこだなって思う。周りに合わせる事を求める大人と、そこに疑問を持つ子供。人と同じじゃなくてピンクの傘だっていいじゃないか。本作は子供目線にカメラは寄り添い、時に世界を大きくみせ、大人になれば何でもないことも、子供なばかりにうまくいかず悪戦苦闘しながら、成長していく姿を時にユニークに瑞々しく描写している。

 子供ながらの憂鬱や苦労も、そうして子供達の目に映る大人の姿もしっかり描写されており、そのユニークな視点や狭い世界の中、一つ一つが冒険でしかしそれを楽しんでいた自分の子供の頃と交差するのだ。ロンドンでの冒険、子供ながらに誰かを守る事、誰かのために頑張る事がセザールを強くし、大人の力を当然できないこともたくさんあるが、等身大の自分でできる事はたくさんある事を知り、自分への自信へとつながっていく。

 ラストはカラフルな風船が放たれていく。自由に空に飛んでいくのだ。冒頭の葬式のシーンとは対照的で、こちらは自由の象徴である。しかしこれは彼自身が成長した証であり、自由とは心の中にある事を観客も改めて思い知るのだ。子供から学ぶことは多い。その自由で個性豊かな発想の数々を大人になる事で失ってほしくない。それは自分自身も子供の頃持っていた感情であり、知らぬ内に失ってしまった感情でもある。大人になったからとて自信を持てる訳ではない。それは自分の日々の行動の結果持てるものである。疑問をうやむやにせず、胸を張って生きてる大人になりたい。いやなるべきなのだ。
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