emily

落下の解剖学のemilyのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.2
雪に囲まれた山荘で暮らす親子。ある日、11歳の息子が血を流して倒れている父を発見。転落死に見えたが、前日に夫婦喧嘩していたことやさまざまな不審点から、妻に夫殺しの目が向けられる。犯人は誰なのか?何があったのか?

法廷で徐々に見えてくる夫婦の関係。録音の夫婦喧嘩はリアルで、それぞれのエゴが見える人間の恐怖。物語りは今起こってること、見える真実を忠実に伝えることに特化している。常に客観的に映し出し、主観を与えるのは私たち観客である。

見えていることだけが真実ではない。感情移入の対象は男女によっても異なるだろうし、夫婦の関係や息子とのやり取りでも変わってくるだろう。見えていることでなく、むしろ見えてないところにこそ大事なことがある。

そこに至るにはさまざなことがあり、誰か一人のせいにすることなんてできない。真実が正しいのか否かも誰にもわからないのだ。

母と息子の絶妙なやりとり。試されるのは親子の絆。全てを見てる愛犬の姿を見てると全て伝わってくる気がする。

見えない部分を繋ぎ合わせ、余白を埋める作業が必要になる本作。それぞれが見ている真実は一つの側面でしかない。今作が導いた真実も正しいかどうかはわからない。わかっているのは、それでも日々は続いていき、息子と母の関係性は切っても切ることができないこと。

152分という長い作品で法廷中心に繰り広げられるが飽きることなく、むしろ展開していくにつれてどんどんのめり込んでしまう
見事なストーリーだった。
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