ヨウ

冬の小鳥のヨウのレビュー・感想・評価

冬の小鳥(2009年製作の映画)
3.7
冒頭の父親との自転車のシーンで見せるジニの笑顔が、本当に印象的だった。この後に待ち受ける現実があるからこそ、この無邪気な笑顔が胸に刺さる。

養護施設に入れられたジニは、自分に課せられた現実が受け入れられずに、食事や周囲の善意など全てを頑なに拒否する。ジニにとってはそれらを受け入れる事は、父親に捨てられた事を受け入れる事と同意義だからだろう。

この養護施設では養子を捜しに里親が訪問に来るが、施設の友人たちがそうして段々と去っていくと、ジニも少しずつ現実を受け入れていく。だからこそ、あの儀式は自身が生まれ変わる為に必要だったのかもしれない。

自身が海外の里親に選ばれ、施設を出る時に見せた集団写真での笑顔はある種の決意に思わせたが、冒頭の無邪気な笑顔はそこにはなかった。

終盤、夢に見た父親との自転車のシーンが、きっとジニがこれから心から大切にしていく想い出になるのだと思うと、本当に切なくなった。
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