ぐるぐるシュルツ

マトリックスのぐるぐるシュルツのレビュー・感想・評価

マトリックス(1999年製作の映画)
4.0
スプーンはそこにない。
曲げるのはスプーンではなく、自分。

〜〜〜

自分がキッズの時に一世風靡していたSF金字塔。
4DXで鑑賞。もはやアトラクション。
ただ、こうやって久々に大人になってから観ると、僕らの世代の『インターネット的世界観』に多大なる影響を与えているなぁと実感する。

作品としては、
西洋的ハードに東洋的ソフトが載っかっている印象で。
武器や武術や思想のソフト面は、幽玄すら感じるオリエンタリズム。
救世主だったり、一回死んでから復活するのは、
もろに西洋の宗教観かな。

そして、ハードロックとスローモーションと銃撃戦。
それを淡々と描き続ける終盤戦は画期的であったのだろうと思う。
今ではもはや少し笑えるかもしれないが、
それでもやっぱりエネルギーが溢れている。
これが、
一つの方法を世界中にねじ込んで浸透させた余韻。
そして、映画史に残るイナバウアー。

〜〜〜

印象的だったのは、預言者の元の研修生の女の子の言葉。
『スプーンはそこにない』
仮想空間と事事無礙、
どちらを意味しているようにも捉えられる。
そして、自分が仮想空間にいるということを考えるのではなく感じる、
というか、そうであるとそのまま知る。
あるがままを知る、
つまり真如を感ずる。
その瞬間、
パワーが桁違いになるっていうのも面白いな。

ネオがエレベーターの爆風から飛び上がるシーンでも、
字幕では『自分を解き放て』と書いてありましたが、
実際には『そこにスプーンはない』と叫んでいた。

最初は『不思議の国のアリス』から始まるのに、
次第に『胡蝶の夢』が続き、
寓話と神話と現実味、
西洋と東洋のバランスが絶妙に混じり合うのが堪らなかった。

〜〜

我を捨ててまでも仲間のために自分の意志を貫く人間と、
自我を持った挙句怒りのあまり我を忘れるAIの対立構造は、
さりげないが核心的。
この矛盾の中に、人間とは何かが見え隠れする。

映画館から出たら台風が迫っていて、
新宿なのに人がまばらだった。
風が無性に強かった。
少しワクワクした。