ninjiro

渚のシンドバッドのninjiroのレビュー・感想・評価

渚のシンドバッド(1995年製作の映画)
3.9
勘違いなんかじゃない。
ちゃんと好きなんだ。

薄い胸板は、いくら勇壮な自分を演じてもその実、何一つ現実の重みを受け止められない。
君が僕を愛せないのは、君が男だから?それとも僕が男だから?
許さない道徳と、割り切れない想い。
誰にもコントロールが出来ない感情。
それは頭か末尾に「愛」がつく感情かも知れない。
或いは、そうじゃないかも知れない。
僕は不完全なこの世界で、ただ一つでも真実が欲しいだけなんだ。
今胸に抱く熱情が、君や他の誰かにはただ醜い劣情にしか見えなかったとしても。

「好き」は、この心から放たれたらどこへ行く?
会いたいけど君に会えない。
会いたいなら会いたいと言えばって?
言ったならどうにかなるの?
ただ、何も出来ず、不恰好に好きなんだ。
そんな気持ちは誰に知らせても、宙を舞って濡れた路面で踏みつけられて穢れるだけ。
君は、本当の僕を、私を知ってるの?

好きになる側には突き動かされながらも組み立てた理屈がある。
好きを受け止める側には理屈を組み立てる為の余裕なんてない。
君は僕じゃない。私は君じゃない。
君の「好き」は、人には理解できない。
君の「愛」は、ただの希望でしかない。

人が人を好きになる、それは惨めなことなんかじゃないはずだ。
なのに、なんでいつもいつも、こんな哀しい気持ちになるんだ?
僕は夕暮れからずっと海辺で、ただ薄い青色の月を眺めていた。

君が好きだ、その一言で、世界は変わる。
その後のことなんて、考えられやしない。
ただ溢れ出す想いは、止められやしない。

割り切れない、ちゃんと好きな気持ち。
世にそれを、青春という。
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