ninjiroさんの映画レビュー・感想・評価

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志乃ちゃんは自分の名前が言えない(2017年製作の映画)

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動画で蠢く私の背中、スピーカーから漏れる私の声、皆んなから言われるよりもいち早く、私は私が気持ち悪いってちゃんと意思表明できた。誰かから同じ言葉を投げかけられて、傷つく前に蓋をした。

揃いの制服、誇
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カランコエの花(2016年製作の映画)

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お前の涙って、温ったかいんだな。お前の髪の毛って、もしゃもしゃすると猫みたいで気持ちいいな。アイス、溶けちゃってるよ。お前のTシャツ、それ知ってるよ、見たことある。あのバンド好きなの?私バンドがどうこ>>続きを読む

A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー(2017年製作の映画)

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死んだ身体を見るのは不思議。特に死んだばかりの身体。最前までそこに宿っていた筈の火が、風も吹きやしないのにふいっと消えてしまうのだから。古来より蝋燭の火に喩えられる、命というもの、まさにそのもの。火が>>続きを読む

her/世界でひとつの彼女(2013年製作の映画)

3.8

子どもの頃よく言われたよ。人の気持ちが分かる人間になれ。悲しんでいるときに言われたよ。お前だけが悲しいんじゃない。僕の想いはほんの小さな粒子だ。風が吹けば飛ばされて、水の流れには戯れるように、誰にも見>>続きを読む

男はつらいよ お帰り 寅さん(2019年製作の映画)

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暗い長い迷い道、あの日教えて貰ったように、ああ生きてきて良かった、そんな風に思える日の為に生きている。疲れ果てた帰りの江ノ電、一緒に揺られる小さな僕にはまだ意味のわからなかったあの小さな涙の訳も、いつ>>続きを読む

男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花(1980年製作の映画)

4.4

お前がどんな風に吹かれたのか知らない。お前がどんな夢を見たのか知らない。通り過ぎた拍子にふと振り返って見たら、その背中越しに綺麗な月が重なって見える。俺は向き直して月を背負って鼻唄混じり、せめてお前の>>続きを読む

ジョーカー(2019年製作の映画)

4.0

笑われることを、笑わせることで上塗りすることと、悪を正義で上塗りすることとは、何処か似ている。
人に笑われることを微塵も気に留めない人は少ないのではないだろうか。思い返せば少なくとも私は、誰にせよ人に
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運び屋(2018年製作の映画)

4.0

需要があるから供給がある。求められれば西へ東へ南へ北へと忙しく、使い古された鎧を載せた馬に、ボロボロのクライスラーのセダンに、派手な色のキャデラックに、黒いピックアップトラックに乗り、金は第一の目的で>>続きを読む

ストレイト・ストーリー(1999年製作の映画)

4.4

俺は医者ってやつが嫌いでね、ドクターあんたの先祖を呪ってる訳じゃない、きっと俺がただ物事をよく見て、ちゃんと知ろうとしないって、そのせいだろう。老いぼれは大なり小なり誰でもみんな同じだ。今更やり方なん>>続きを読む

心と体と(2017年製作の映画)

4.5

夢の中にぐらい神秘があってもいいんじゃないか。仕事帰りに買い物に寄った先にも、目覚めて身支度を整えて仕事場に出掛けても、どの過程もどの通り道も、一通り神秘の入り込む余地がないことは確認できた。家に着い>>続きを読む

きみの鳥はうたえる(2018年製作の映画)

3.8

くだらねえなと思うことを客の一人も居ない舞台に見立てて恐れずに飛び込んでやり過ごす、星が廻る真夜中。そうだよまだ真夜中だろと思ったらそれはもう夜明け近く、誰に見せる為でもなく損したような気分になった振>>続きを読む

エターナル・サンシャイン(2004年製作の映画)

4.5

それがやって来るきっかけが感知できれば或いは何かが変わったりするんだろうか。抗いようのない感情が、あれよあれよと見廻す隙もなく建て付けを完了して真夜中見知らぬ地図に釘付けで、真昼間には翼竜の舞うような>>続きを読む

ボヘミアン・ラプソディ(2018年製作の映画)

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誰かお願い、僕に愛する人を見付けてくれないか?(Queen 「Somebody to Love」)
実は本作、普段あまり劇場で新作を観ない私としては珍しく、昨年の封切り日しかも初回にきっちりと予約を
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アイ・オリジンズ(2014年製作の映画)

4.2

何でもいい、人間がある事象についてものを思う時には、いつも事象とそれが齎す結果をそのままに淡々と受け止める意識と、今現在まで世界に遍く蓄積された知識の中から事例を抽出し事象の因果関係を特定しようとする>>続きを読む

アデル、ブルーは熱い色(2013年製作の映画)

4.8

同じ形をしているのに何故こんなにも違うんだろう。たった一ミリにも満たない差異が私にはない深い憂いを湛えて、原初、引力が作り出す真っ黒な夜と眩しい昼、つまりは奇跡を思い出させてくれる。出会えたことが奇跡>>続きを読む

アリー/ スター誕生(2018年製作の映画)

4.2

最後に明日のことを自分で決めたのなんていつのことだっただろう。
一度走り出したら目的地なんてない。途中下車して放り出して全部を棒に振るか、一休みする程度しか選択肢なんて残っていない。高速道路を走り続
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トゥルー・ロマンス(1993年製作の映画)

4.0

子どもの頃、猛烈に買って欲しいおもちゃがあって、もしあれが手に入ったなら、その日から自分の人生が変わるに違いないと信じて疑わなかった。
ついこの間まで公開を待ち詫びた映画があって、それを観られる日が
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フィッシャー・キング(1991年製作の映画)

4.5

人生なんて永い永い夢だと誰かは言う。夢のまた夢、夢から覚めた先の夢。夢の中の私たちをマペットだとするならば、過去も未来も永劫に、指切りの契りを交わすことのないマペティアの指は一体、誰のものだろう?
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四月物語(1998年製作の映画)

3.8

いい風が吹き込んで来る。
遠い向こうまで続く桜のトンネル、憂いの数だけ花弁は路面に降り注ぎ、小さな足取りにもつられて舞い上がる。幾つもある十字路、T字路、曲がり角、湾曲した道、通り道ごとに違う場所へと
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愛の新世界(1994年製作の映画)

3.9

路傍の花の揺れるが如く、記憶の中に愛はそよぐ。咲き誇る花、競って訪う働き蜂はその足で愛の記憶を伝達して、忙しく働く雌、惰眠を貪る雄、それぞれの存在する意味を確認するように、包み込む世界を丸ごと愛して受>>続きを読む

皮ジャン反抗族(1978年製作の映画)

1.8

舘ひろし主演映画、タイトルが「皮ジャン反抗族」とくれば、当時多くの人が連想したのは舘ひろしが創設したバイクチーム「クールス」のことだったろう。たっぷりとしたボリュームのリーゼント、黒いレザージャケット>>続きを読む

恋恋風塵(れんれんふうじん)(1987年製作の映画)

4.2

産まれてもいない時代の、行ったこともない国。何故こんなにも懐かしいのだろう。
年代からすれば私の父親が送った青春時代、その時の日本の風景はこれに近かったかも知れない。遠い記憶、父が見せてくれたアルバ
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サスペリア(2018年製作の映画)

4.0

暗闇に咲く黒い華、神秘は造られたものの上に座して、錯誤はやがて本質となるが為に肉を抉り、頭を挿げ替える。練り固められて元の形を留めないしなやかな平面は嘗ての夢も理想も古の美酒も口にした平面、そのフロア>>続きを読む

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)

4.4

その季節は半分裸のようにして過ぎた。僕たちが裸だったのは勿論のこと、裸の僕たちを迎える草いきれや土の匂い、気まぐれな子供のような風や清冽な水、全部が何も纏わぬ肌のように肌から肌へと感触を伝播する。夜の>>続きを読む

ファイト・クラブ(1999年製作の映画)

4.1

売れ筋の車を買い、市場価格相応の注意を払って財産を保全し、標識の示す情報を基に走り、制限速度は程々に、赤信号で止まり、青信号でまた走り出す。自由自在に乗りこなしているように見えて、それはただ大昔に通っ>>続きを読む

トキワ荘の青春(1995年製作の映画)

3.8

後に残るのは喪失感ではない。元より失うことなど問題にはしていない筈だと我々は理解しているからだ。しかし心に空いた空白が、騒がしかった毎日が、少しずつ静かになって行く優しい空白が、毎夜毎晩頼みもしないの>>続きを読む

会社物語 MEMORIES OF YOU(1988年製作の映画)

3.9

「よぉ!今の日本は俺たちが作ったんだぞぉ!」
些かくたびれたクレージーキャッツのメンバーとともに新宿の街を千鳥足で歩く植木等が、誰にともなくただ嘗てとは様変わりした東京の夜空に叫ぶ。

グッと
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BU・SU(1987年製作の映画)

3.9

田舎から上京するまだ面影幼い少女。
故郷の海、ろくに訣れも口にしなかった母の姿、トンネルを抜けた山間の町、童謡「花の街」が流れて、いつのまにか車窓から見えるのはビルの立ち並ぶ、空の狭い風景。頼りなく風
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フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法(2017年製作の映画)

4.3

どうして誰も助けてくれないのかなと考えたことはあったけど、私が悪い子なのは確かだし、私のために誰か他の人が必死になるなんて、そんなのそもそもおかしいもの。
ついこの間まで大きな樹にもたれ掛かって、その
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ザ・デッド/「ダブリン市民」より(1987年製作の映画)

4.1

遠い昔に置いてきた我が身と共にある想い出。
故郷であり、家族であり、初恋であり、苦悩であり、懐かしい原風景とともにある我が身は若々しくも、影も無き無垢な白に見えながら、路傍に積まれた雪に同じく、時を
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劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語(2013年製作の映画)

4.6

あの丘の上でふたり話したこと。
私だけが知ってるあなたのこと。
あなたが知ってる幾つかのこと。
話したくない私は放したくない。
私が少し知ってるあなたのこと。あなたの絶望を予め知っていたら、私の中の永
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男と女(1966年製作の映画)

3.8

銀細工の街、寒々とした海。褪せた雲間から差し込む光は眩しすぎて、白でも黒でもない曖昧な心、負った古傷を海風は乾かすでもなく疼かせる。ボードウォークの靴音は低く、遠く離れた爆音のような響き、笑顔を貼り付>>続きを読む

エンドレス・ポエトリー(2016年製作の映画)

4.1

夢は消えた。誘惑の瞳、ポケットの無い穿き物。視界を遮る性も死も相応しい隠し場所を持たず、両手は握ることを知らされず、切り花を敷き詰めた箱の中、幾億の針先により構成された道の無きガレージの中、優雅に飛ぶ>>続きを読む

スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー/純愛日記(1970年製作の映画)

4.0

この世の終わりがもうすぐ来るとしたら、どうする?そう静かに言いながら、ベッドからはみ出したシーツを手際よく直した彼の眼は、少なくとも私の眼には、彼のいつもの悪戯な瞳として映らなかった。きっとつまらない>>続きを読む

劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 後編 永遠の物語(2012年製作の映画)

4.5

希望と絶望は相見えて、希望は単なる入り口だった事をその時初めて知る。出口だと思った絶望は果てしなく続き、時折掠める仄かな灯や標識の影だけが、今も尚この意識が暗闇の中にあることを教えてくれる。いつかの祈>>続きを読む

劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 前編 始まりの物語(2012年製作の映画)

4.5

繋いだ手の暖かさ、その余韻だけを頼りに幾つもの夜を越えて。夢の中で会った顔、靄が掛かったように見つけられない探し物、気がつけば本当にそれがここにあったのかどうかを疑う程、でも待ってて、約束がなくても必>>続きを読む

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