てづか

隠し砦の三悪人のてづかのレビュー・感想・評価

隠し砦の三悪人(1958年製作の映画)
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三船の登場シーン超かっこいい………暗闇から浮かび上がる三船のシルエットが最高すぎる。

狂言回しの立ち位置である又七と太平と、それを引っ張る六郎太、そして紅一点の姫というパーティー編成が良い。ドラクエ感がある。

特に雪姫さまのハッと息を飲むほどの美しさに反する、お世辞にも上手とは言えないセリフ読みあげ感。結構すき。笑

全体的にコミカルな作りも楽しめた。
本当は唖じゃないお姫様相手にパントマイムするシーンなんか現代の感性で観てもほんと面白くて、時代に左右されない笑いのセンスが感じられて良かった〜
初期のあの人間の嫌なところもいいところも煮詰めたような映画もあれば、こういう娯楽映画もほんとに面白く作れるのはすごいなと思う。

ドラクエどころか全てのRPGとかアドベンチャーものの基になってんじゃないのと思うくらい王道。観ていて気持ちはいい。

でも、少し寂しくもある。ドロドロとした人間の感情みたいなのが薄まってしまっている気がして。

初期の作品は、どれも基本的に登場人物ひいては監督である黒澤明さん本人に感情移入ができたし、黒澤さんがどんなものに愛があるのかどんなものに恐怖しているのかが私みたいな馬鹿にでもなんとなくわかるような作品が多かったと思う。
この作品も、蜘蛛巣城もそういうところは見当たらない。だからちょっと寂しい。
わが青春に悔いなしや白痴を観た時のような、叫び出したくなるほどの感情移入ができないことへの寂しさ。あの作品たちを観た時には、七人の侍の菊千代みたいに「コイツは俺だ!!!!」と叫び出したくなるくらいのナマの人間の感情があったと思う。そう考えると、あの時はこんな映画の見方でいいのかと迷っていたけど、感情移入をしすぎるほどの映画に出会えたことはそれほど幸せなことないのかもしれない。それでこそ私の魂は救われるのだから。

まあ、それはさておき。

三船が両手で刀を持ちながら馬で駆けていくシーンはどうやって撮影したんだろう!?と思った。
手綱も持たないでどうやって??何もなしで三船の体幹が凄かっただけ???そしたら化け物じゃん…………しかも槍vs刀って………リーチが違いすぎる!!!!あそこのシーン超カッコよくて巻き戻して観ちゃった♬︎

とか思ってたら藤田進さん出てきてまたテンション上がるっていう。
藤田進さんに勝ったあとの三船のニカッ!!っていう笑顔が最っ高にかっこよかった。惚れた。

またドラクエの話しちゃうけど、戦闘時にかかる音楽もドラクエの戦闘BGMっぽさがあるんだよなあ。作曲家さんとかは、こういう映画音楽からも参考にしてたりするのかな?

蜘蛛巣城のときも鼓の音が聞こえたけど、こっちも鼓とか和太鼓系の音があってそれがオーケストラみたいな音楽と一緒に流れるのがなんか不思議だった。

ラスト、喧嘩ばっかりだった2人の笑顔が気持ちいい。

面白かったけど、もう少しお腹にずっしり来て欲しい。来たら来たで、胃もたれしそうだけど。
てづか

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