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海の上のピアニストのn0701のネタバレレビュー・内容・結末

海の上のピアニスト(1998年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

音楽には無限の可能性がある。
それを題名だとか、テーマだとか型に嵌めてしまうことで小さな小さな存在になっていく。

ある男はトランペットを手に楽器屋の扉を叩く。トランペットを売って金に替えるためだ。戦争は全ての人の運命を大きく変えていった。彼もその一人であった。

ある男は1900と呼ばれることとなる。
豪華客船で捨てられていた男の子だった。彼は船で寝泊まりして暮らす乗務員に拾われる。煤に塗れ、教育もままならず、難破寸前の大嵐の中を平然と暮らしていた。そんな絶望的な環境で1900はピアノを弾いていた。囚われず、自由で、誰も聞いたことのない音楽を奏でていた。

この物語は、1900が船の中でどのように成長していったのか、その記録と、トランペットを売った男が現在の1900を探すという2つの時間軸で構成されている。

1900の物語はその中でも過去に行ったり、戻ってきたりとするため、やや複雑な構成となっている。

さて、物語は1900が伝説的なピアニストで、さらに船から一歩たりとも降りたことがないとう奇抜な設定だ。

この物語の契機となるのは、1900が乗船していた豪華客船がもうオンボロになったため、ダイナマイトで爆発させると言う情報がトランペッターの耳に入ったことから始まる。

トランペッターは1900がまだ船の中にいると確信して、爆破の関係者を説得し、船内をくまなく調べる。しかし、1900は見つからない。そうした中で、1900がいかに船外に出る可能性がないか、どんな痛快なエピソードを持っているか、過去を回想しながら現在の居場所の検討をつけるというところに物語としての面白さがある。

自分の気持ちのままに奏でる音楽、ジャズを生み出した黒人とのピアノによる決闘、そして、一人の少女のために奏でた音色。

最終的に、トランペッターは、1900が船内の奥底に隠れていたところを見つけ出す。トランペッターは1900が一度だけ録音した音楽の原盤を有していたからだ。それは1900が唯一恋した少女のために捧げたもので、1900自身の手によって破壊したものだった。トランペッターはこっそりとその原盤をピアノに隠していた。

原盤が隠されていたピアノは中古市場に流れ、偶然トランペッターが自らのトランペットを売りに出した店に置かれていたのだった。

数奇な巡り合わせによって、1900はその死の直前にもう一度だけ、親友と出会うことになる。

1900は、無限であるはずの人生をただピアノを弾くだけに費やし、船の中でだけで過ごした。彼は単に勇気がなかっただけなのだろうか?それとも意地になっていただけなのか?彼にしか分からないことだろうが、1つだけ思うことがある。

船を解体するのに、海上で爆発はないやろ、と。
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