ピッツア橋本

サイドカーに犬のピッツア橋本のレビュー・感想・評価

サイドカーに犬(2007年製作の映画)
4.4
"友達になってくれてありがとう"

芥川賞作家長嶋有の同小説がとても良かったこと、ちゃんと竹内結子の演技を見てみようと思った事が重なり鑑賞。

主人公が幼少期に体験した父の愛人で、私の友達になってくれた洋子さんと織りなすひと夏の家族ドラマ。

原作の読みやすくて切ない世界観、というか洋子さんを竹内結子が演じるとこうなるんだなあとじんわり感動。

洋子さんのどら焼き食べながら涙を流すシーンから涙腺爆発。
小説で感じた洋子さんの潔いのに儚い、元気なのに憂いを感じる所作や言動。
誰よりも愛情深くてカッコ良いし正しいのに、一番理解して欲しい誰かと決定的なところですれ違ってしまう哀しみ。
思いやって尽くした努力がなぜかねじ曲がって周囲に伝わるもどかしさ、やり切れなさ。

そこに竹内結子のピュアで爽やかな笑顔が入り混じると、なんとも言えない悲しみが押し寄せてきた。

洋子さんのように美人で母性溢れるのに何故か悲しい恋ばかり、愛人止まりという人種は昭和だろうが平成令和だろうが日本のどこかで儚い思いをしているのだろう。
かつてこんな女性が近所にいたような錯覚に陥る。

サイドカーに犬、よりも、自転車と洋子さん、って感じの作品だと思った。

ラストのように、洋子さんも竹内結子も誰かの心に回顧したくなる何かを残した素敵な女性でした。
ピッツア橋本

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